5 ページ5
今日の佐藤さんはなんだかいつもと違う。
お酒を飲んだから、少し酔ってるのかもしれない。
せっかく本当は言いたくないお世辞を言ってくれてるんだから、受け入れないと。
「‥ありがとうございます」
.
食事が終わり、佐藤さんが家の近くまで送ってくれた。
「ここで平気です、今日はありがとうございました。
ご馳走にまでなっちゃって‥」
「なんでそんな申し訳なさそうな顔をするの？
楽しくなかった？」
そう言って、困ったように笑う佐藤さんに、
「違いますっ、とても楽しかったです！
佐藤さん優しすぎて、怒られても仕方ない事をしたのに‥、本当に申し訳ありませんでした」
と頭を下げる。
飲み会から逃げた上に、佐藤さんに迷惑をかけた。
怒られても文句は言えない。
「俺優しくないよ、全然」
さっきまでニコニコしてた佐藤さんの表情が真剣な表情へと変わる。
え？と聞き返すと、
じゃあお疲れ様。ゆっくり休んで、
と背中を向けて行ってしまった。
一瞬見えた無理に笑う佐藤さんが、なんだか辛そうで
引き止めようと思ったけれど、足がすくんだ。
モヤモヤした気持ちのままエレベーターを使って家の前まで行くと、
「‥おかえり」
居るはずのない泰斗が家の扉の前に立っていた。
「何で‥、」
「莉央から聞いた、心配で来たけどその必要もなかったみたいだね、ごめんな」
ハハッと笑って私を横切ろうとする、泰斗の手を掴む。
「‥待って」
「成海くんと、付き合ってるの？」
私の声に被せるように言う泰斗。
「違‥」
「ふーん、まあ付き合ってたらあんなとこ連れて来ないよね、
‥じゃあ好き？」
「佐藤さんは仕事の上司で、好きも嫌いもな、」
「そっか、別にどっちでもいいけど」
久しぶりなのに、冷たい泰斗の態度と、棘のある口調に、怖気づいてしまう。
泰斗は最初から私のこと気付いてたんだ。
視界がどんどん滲んでいくのがわかる。
「‥会えて嬉しかった、大きくなったね泰斗」
緩んだ涙腺をこめかみに力を入れて、目に溜まったものを流さないよう笑顔を作る。
「覚えててくれてた事も、こうやって来てくれた事も全部嬉しいよ」
「じゃあ何で抜けだしたの？俺だって気付いたからだろ？」
「っそれは、」
話していると、同じ階の人がエレベーターを降りてきて、不思議そうな目で見られる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ココア - 最初から最後まで見させていただきました！素敵な作品でした！読んでいる途中で涙が出てきました(´；ω；`)私が好きなすとぷりの方々でさらに(´；ω；`)これからも素敵な作品を作ってください！応援しています！ (2018年4月24日 19時) (
レス) id: e2c2ecdd59 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 琥 珀 く ん 。さん» コメントありがとうございます。琥珀くん。さんにとっての“幸せ”の在り方を良い意味で変えることができたならとても嬉しいです(´｡･-･｡) 最後まで読んで下さったこと、心から感謝致します。ありがとうございました( ∩'-'⊂ ) (2018年4月10日 20時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 夜菜さん» “虐め”や“嫌がらせ”って、孤独で寂しくて、自分の存在を否定されているように感じて本当に辛いですよね。それを乗り越えるお手伝いが出来た事、本当に嬉しく思います。と同時に、その経験を伝えてくださった事、心から感謝致します。最後まで有難うございました。 (2018年4月10日 20時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 紗菜さん» コメントありがとうございます。大小関係なく、幸せを感じられる心を持った方って素敵ですよね(^^)修正をしております、宜しければラストがどんな風になるか見届けて下さると嬉しいです。最後まで読んで下さり本当に有難うございました。 (2018年4月10日 19時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
夜菜 - 最初から最後まで読ませていただきました。もう涙が止まりません。今生きていることって幸せな事だと感じさせられました。私は今までいじめを受けてきてもう耐えきれずに死のうと考えてた事が、今では気持ちがすっきりして生きていてよかったと思ってます。 (2018年4月7日 1時) (レス) id: 3ca2660054 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：綾 | 作成日時：2017年5月12日 20時
