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「っ冷た」
「おはよう森山、相変わらず早いな」
今日行く営業先の資料に目を通していると、
頰に感じた冷たい物。
その先に目を移すとニヤリと笑った上司がいて、
反応遅く、おはようございます、と返す。
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佐藤成海(=さとみ)
教育指導兼、一番頼りにしている上司。
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朝、まだ下っ端の私は、誰よりも先に来て、
準備を始める。
準備が終わると丁度よく、会社の人たちが出勤し始めるのだけれど、
今日の佐藤さんはいつもより早い。
「あの、私コーヒーは‥、」
頰に当てられた缶コーヒーは、私の苦手なブラック。
本当は無理にでも飲まないといけないのだろうけれど、
いつもお世話になってる佐藤さんには伝えないといけないと思った。
「知ってる、これは俺の。森山のはこれ」
と、机の上に置かれたのは私がいつも飲んでるパックのコーヒー牛乳。
「今日は大手の大丸商事だからね、確実にとってくる為の秘策考えてきた」
と、ホッチキスで止められた資料を佐藤さんから受け取る。
佐藤さんにとって私は部下で、部下である私が佐藤さんに気を遣わなければいけないのに、
佐藤さんはいつも優しくて、周りをよく見てる。
それなのに申し訳ない気持ちを相手に感じさせることなく、
ついでにね、と微笑んでプルタブを開け飲みながら、
昨日の夜に考えたであろう作戦を私に話し始めた。
「‥ありがとうございます」
でもやっぱり申し訳なくて蚊の鳴くような声で佐藤さんへの感謝の気持ちを伝えると、
もっと感謝したまえ、と笑っていいながら、自然に仕事の話へと変える。
佐藤さんはとても尊敬のできる、憧れの上司。
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大丸商事を説得させるのにとても時間がかかったけれど、佐藤さんの人柄の良い性格のおかげか、無事に成功した。
「やったな!森山のサポートのおかげだわ、ほんとありがとう!!」
交渉してたのは佐藤さんで、私はただ座っていただけなのに。
「全部佐藤さんの実力と話術と熱意のおかげです。私は何も」
「え?さっき取引先の上野さんと話したけど、森山のこと褒めてたよ。話の聞き方と、丁寧な話し方、豊かな表情と、まとめてくれた資料めっちゃ分かりやすかったって。
当たり前だけどなかなかできないよ。
良い部下を持ったなって俺は鼻高々」
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ココア - 最初から最後まで見させていただきました!素敵な作品でした!読んでいる途中で涙が出てきました(´;ω;`)私が好きなすとぷりの方々でさらに(´;ω;`)これからも素敵な作品を作ってください!応援しています! (2018年4月24日 19時) (レス) id: e2c2ecdd59 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 琥 珀 く ん 。さん» コメントありがとうございます。琥珀くん。さんにとっての“幸せ”の在り方を良い意味で変えることができたならとても嬉しいです(´。・-・。) 最後まで読んで下さったこと、心から感謝致します。ありがとうございました( ∩'-'⊂ ) (2018年4月10日 20時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 夜菜さん» “虐め”や“嫌がらせ”って、孤独で寂しくて、自分の存在を否定されているように感じて本当に辛いですよね。それを乗り越えるお手伝いが出来た事、本当に嬉しく思います。と同時に、その経験を伝えてくださった事、心から感謝致します。最後まで有難うございました。 (2018年4月10日 20時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 紗菜さん» コメントありがとうございます。大小関係なく、幸せを感じられる心を持った方って素敵ですよね(^^)修正をしております、宜しければラストがどんな風になるか見届けて下さると嬉しいです。最後まで読んで下さり本当に有難うございました。 (2018年4月10日 19時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
夜菜 - 最初から最後まで読ませていただきました。もう涙が止まりません。今生きていることって幸せな事だと感じさせられました。私は今までいじめを受けてきてもう耐えきれずに死のうと考えてた事が、今では気持ちがすっきりして生きていてよかったと思ってます。 (2018年4月7日 1時) (レス) id: 3ca2660054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾 | 作成日時:2017年5月12日 20時