16.救世主 ページ31
重く垂れ込む空の下、沈黙の続く二人の距離は遠く感じた。
少し前を行く義勝くんの背中を見つめることしか出来なくて、ますます自分が情けなく感じた。
大学はもうすぐ目の前。
折角、義勝くんに朝一番に会えたのに、このままなにも話せないまま終わってしまうのかな。
背中を見てるだけじゃ、彼の気持ちなんて全然わからないのに。
話したい。
何か、何か話すことは、と考えてみるけど、出てくるのは当たり障りのない定型文ばかり。
(なんで私って、いつもこうなんだろう...)
肝心な時に何も話せない。
思わずため息が漏れた。
｢Aちゃん？｣
ふと、背中から名前を呼ばれた。
声ですぐにわかった。
振り返れば、おはよう、と手を振る彼がいた。
｢八木くん、おはよう｣
｢おはよう、って、あれ...｣
八木くんの視線が、斜め前に向けられる。
もちろんその人は、
｢なんでよっちゃんと？｣
｢...あ、えっと、これはその、｣
眉を顰める八木くんを前に、上手く弁解の言葉が見つからない。(そもそも弁解するような事ではないけれど)
｢たまたま、｣
私が口ごもっていると、上から声が降ってきた。
｢たまたま、さっき会っただけだよ｣
彼は私たちに背を向けたまま、淡々とそう答えた。
私も、そうなの、と慌てて付け足す。
｢へぇ、たまたまね｣
八木くんは納得いかない、といった顔をしたけれど、それ以上追求して来ることはなかった。
とりあえず、重たい空気を破ってくれた八木くんに感謝することにしよう。
(あのまま二人きりだったら...)
そう考えると八木くんは救世主なのかもしれない。
そんな、安堵ともに、少し残念に思っている自分もいて、
そんなふうに思っている自分に嫌気がさした。
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ねまき(プロフ) - はるさん» 最初から読み直していただけるなんて！！ご愛読ありがとうございます。更新がまばらではありますが、これからも応援どうぞよろしくお願いします！ (2019年10月7日 9時) (
レス) id: 931eecc95f (このIDを非表示/違反報告)
はる - 最近更新してくださっていたので最初から読み返していました！展開が気になります〜。更新頑張って下さい。楽しみにしてます！！！ (2019年10月7日 1時) (レス) id: bc458fa271 (このIDを非表示/違反報告)
雅樂(プロフ) - neko inuさん» コメントありがとうございます！最近更新がまばらでごめんなさい！待っててもらえてるなんて、とても嬉しいです◎これからもがんばりますのでよろしくお願いします！ (2019年7月27日 21時) (レス) id: 931eecc95f (このIDを非表示/違反報告)
neko inu(プロフ) - 更新楽しみに待ってました！とっても嬉しいです(；；)！続きも、短編の方もこれからも楽しみに待っています！頑張ってください！ (2019年7月26日 23時) (レス) id: e06fed49e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねまき | 作成日時：2019年6月19日 23時
