14.困惑、焦燥 ページ29
22時。
いつも通り深夜練。
くあ、と大きく欠伸をして、メンバーとスタジオに入った。
ドラムセットの前に立ってもいまいち気合いが入らない。
軽く叩いてみても、なんだかぼーっとしてしまって集中できない。
理由はよくわかっていた。
チラリと義勝の方に目をやると、変わった様子もなくチューニングをしている。
ムカムカと、腹の奥から何かが上がってくる感覚に襲われて、水を流し込む。
あの夜、一体二人の間に何があったのか。
そればかりがしつこく頭の中に渦巻いていなくならない。
結局、単純なミスばかりしてしまって、ますます気分は落ち込んでいった。
｢八木氏調子悪くね？｣
｢んー、なんでだろ｣
武正が心配そうに、なんかあった？、なんて聞いてくるけど、原因となる人物を前にしては何も口に出来なくて、
｢俺、先出てるわ｣
楽器を片付けているメンバーを残してスタジオを出た。
重たいドアを開けると、夜風が髪を揺らした。
外の空気吸えば少しはこのモヤモヤがなくなると思ったけど、全然そんなことないや。
｢おつかれ｣
不意に声をかけられて振り返る。
誰だかわかっていた。
なんで今、お前なんだよ、本当に。
｢おう、おつかれ｣
｢今日体調でも悪いの？｣
思ってもないくせに、心配してるような顔すんなよ。
(ムカつく)
｢それとも、｣
｢Aちゃんのこと？｣
図星を突かれてますます頭に血が昇った。
それを悟られまいと、視線を地面に落とす。
「別に、なんもねぇよ」
本当は問い詰めたいところだけど、義勝の口から真実を聞くことを俺のプライドは許してくれなかった。
あっそ、と素っ気ない返事を落として戻ろうとする義勝の背中に、俺は慌てて言葉を投げた。
「その気もないくせに、勘違いさせるようなことすんなよ」
俺の言葉に足を止め、振り返る義勝の目が俺を捉える。
「その気がないなんて、俺一度も言ってねえけど」
返ってきた言葉は、そのまま俺の心臓に真っ直ぐと突き刺さった。
途端に、ドクンドクンと騒ぎ出す。
全身に嫌な予感がザワザワと走った。
「なんてね」
そう一言、イタズラに言い残してスタジオに戻っていった。
感情の昂りをどうにか抑えようと大きく息を吸い込む。
それでも頭の中で渦巻く感情は収まることはなく、焦燥感に満たされた頭を掻き毟った。
「あー、くそっ…」
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ねまき(プロフ) - はるさん» 最初から読み直していただけるなんて！！ご愛読ありがとうございます。更新がまばらではありますが、これからも応援どうぞよろしくお願いします！ (2019年10月7日 9時) (
レス) id: 931eecc95f (このIDを非表示/違反報告)
はる - 最近更新してくださっていたので最初から読み返していました！展開が気になります〜。更新頑張って下さい。楽しみにしてます！！！ (2019年10月7日 1時) (レス) id: bc458fa271 (このIDを非表示/違反報告)
雅樂(プロフ) - neko inuさん» コメントありがとうございます！最近更新がまばらでごめんなさい！待っててもらえてるなんて、とても嬉しいです◎これからもがんばりますのでよろしくお願いします！ (2019年7月27日 21時) (レス) id: 931eecc95f (このIDを非表示/違反報告)
neko inu(プロフ) - 更新楽しみに待ってました！とっても嬉しいです(；；)！続きも、短編の方もこれからも楽しみに待っています！頑張ってください！ (2019年7月26日 23時) (レス) id: e06fed49e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねまき | 作成日時：2019年6月19日 23時
