6.反響 ページ14
各々楽器のセッティングを終え、それぞれの位置につく。
私はそれをスタジオの端でただ見ていた。
寺中さんと義勝さんの前に置かれた2本のマイク。
2人がボーカルというやつなのだろうか。
｢よっしゃ、やるか！｣
その声を合図に、演奏が始まる。
音楽に詳しくない私でもうっとりしてしまうようなギターリフ。
テンポのよい四つ打ちのリズム。
心地よい低音。
そして、思わず息を呑むような歌声。
寺中さんの力強い歌声と、義勝さんのあの繊細で甘い歌声が美しく混ざり合う。
耳から脳内へ直接流れ込むそれらに、私の全身が震えた。
なにこれ、凄い。
今まで音楽にこれほど心を動かされたことがあっただろうか。
初めての感覚に戸惑っているうちに曲は終わっていた。
｢どう？俺らの曲｣
｢凄く、かっこよかった…｣
それを聞くと満足そうに微笑む八木くん。
彼の額の汗がキラリと光る。
｢Aちゃん来るって八木氏から聞いてさ〜俺張り切っちゃったよ〜｣
｢巨匠、最高にかっこつけてたね〜｣
｢うっせ！それは武正もだろ！｣
じゃれ合う2人を横目に、ベースをしまう義勝さんに声をかける。
｢ボーカルだったんですね｣
｢ああ…まあ、一応ね｣
｢凄く、素敵でした｣
｢ん、ありがと｣
あまりに素っ気ない対応に、昨日の出来事が嘘のように思えた。
｢あのさ｣
｢はい｣
｢なんか勘違いしてたらやだから言うけど、｣
私の耳に彼の口が近づく。
｢男はなんとも思ってない女にもキス出来るんだよ｣
耳元で反響するその声は、今までに聞いたことないほど冷え切っていた。
｢あれれ〜お二人さん何話してるの〜？｣
｢なにも｣
硬直した私を取り残し、いつもの様子でメンバーと話す彼の背中に問いかける。
勘違いって何？
じゃあ、あのキスは一体…
胸の奥に出来た傷口がチクリと痛む。
目から溢れ出しそうな何かを、下唇を噛んでぐっと堪える。
なんだ、私は遊ばれただけか。
気付きたくなかったそれに気づいてしまった私は、いてもたってもいられなくなって、
｢…っ！Aちゃん！？｣
呼び止める声を無視してスタジオを飛び出した。
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ねまき(プロフ) - はるさん» 最初から読み直していただけるなんて！！ご愛読ありがとうございます。更新がまばらではありますが、これからも応援どうぞよろしくお願いします！ (2019年10月7日 9時) (
レス) id: 931eecc95f (このIDを非表示/違反報告)
はる - 最近更新してくださっていたので最初から読み返していました！展開が気になります〜。更新頑張って下さい。楽しみにしてます！！！ (2019年10月7日 1時) (レス) id: bc458fa271 (このIDを非表示/違反報告)
雅樂(プロフ) - neko inuさん» コメントありがとうございます！最近更新がまばらでごめんなさい！待っててもらえてるなんて、とても嬉しいです◎これからもがんばりますのでよろしくお願いします！ (2019年7月27日 21時) (レス) id: 931eecc95f (このIDを非表示/違反報告)
neko inu(プロフ) - 更新楽しみに待ってました！とっても嬉しいです(；；)！続きも、短編の方もこれからも楽しみに待っています！頑張ってください！ (2019年7月26日 23時) (レス) id: e06fed49e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねまき | 作成日時：2019年6月19日 23時
