ゼロからはじまるストーリー

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「……ううう」

顔を半分だけお湯に浸けて、ぶくぶくと泡をたたせるように息を吐いた。
もう1、2時間はお風呂に入っているかもしれない。流石に出なきゃのぼせる。

「だからって、出れたらもうとっくに出てるよねえ……」

あの後、そのまま家に帰ったは良いものの、罪悪感に襲われ、涼香ちゃんに連絡、いや、先に尚さんに確認、いやでもあの人絶対涼香ちゃんのところに行くはずだし……と考えていた結果、よくわからなくなって、あっという間に日付は変わり、とりあえずお風呂に入っている。

空白の1年がくだらない理由なら全然良いのだけど、多分、絶対そうじゃない。
これで何かあったら、私のせいだ。

「最低だな、私」
「どうかしたんですか」
「ひゃっ！！！」

ドア越しに尚さんの声が聞こえて、私は情け無い声を出しながら飛び上がった。

「すみません、驚かせるつもりはなかったのですが」
「い、いえ……大丈夫です。お帰りなさい」
「しばらく待っていたのですが出てこなかったので、倒れてるのではと思いましたが大丈夫そうですね」

この言い方から察するに、私が気づかなかっただけで、結構前から尚さんは帰宅していたようだ。

「流石に長すぎましたね。すぐ上がります」

そう言って立ち上がると、今見ている景色がくらくらと揺れ始めた。のぼせたのか、そりゃ普段よりも長くお風呂に入ってたらそうなる。

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