ゼロからはじまるストーリー

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「今、何時だと思ってるんですか……」

ため息混じりの尚さんにそう言われて時計を確認すると、あと少しで3時になるところだった。

「3時……です。夜中の」

夜更かしして両親に叱られているような、そんな気持ちになって、俯きながら答えると、尚さんはそれを察したのか、「怒っているわけではないんです」と前置きしつつ続けた。

「ただ、こんな時間まで起きていたら明日辛いですから」
「ごめんなさい、でも……」

起きてたら、尚さんに会えるんじゃないかって、少し期待してた私がいて。
と面と向かって言うのは恥ずかしくて躊躇った。けれど、尚さんはその続きが気になったようで、「でも、なんですか？」と問いかけてきた。

「…… 起きてたら尚さんに会えるんじゃないかって思って」

私がそう言うと、しばらく尚さんはなにも言わなかった。
逆になにも言われないのが怖くて、そっと尚さんの方を見ると、彼は小さく笑っていた。
私の目線に気づいた瞬間、元の顔に戻ってしまったけれど。

案外満更でもなかったのかな、なんて尚さんをぼーっと眺めていると、彼は突然リビングのドアの前で立ち止まった。

「貴女がどう思ったかは別として、私は貴女の顔を久しぶりに見れて嬉しかったです」

ぽつりとそう呟いてすぐに、尚さんはお風呂に向かったようだった。

しばらくして、呟かれた言葉の意味を理解し始めて、返事にしては遅すぎる、「私も！」という言葉をリビングで叫んでしまった。

そう思いたくはないけど、お風呂場にも聞こえるほど大きな声だったのか、尚さんの笑い声がそこから聞こえた気がした。

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