ゼロからはじまるストーリー

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尚さんのより一層驚いた顔を見て、今自分が何を口走ったか再確認させられた。
なんて余計なことを言ってしまったんだろう。

すると尚さんの手が私の頬に添えられて、そっと指で涙を拭われた。

「……すみません、ただの婚約者がこんなこと言って、困りますよね。だって尚さんは、」

私のこと好きじゃないですよね。という言葉は遮られた。


状況を理解できたのは少し後のことだった。
私今、尚さんに……

私が小さく悲鳴をあげたのとほとんど同時に、唇にあたる感覚が消えた。

「困ったことなどありません。何度も言いますが、貴女の心配を余計だと思ったこともありません。今だって謝ることじゃない。だから……そんなこと言わないでください」

「でも、だって、」

駄々をこねる子供のような返事しかできない私の頭の上に、尚さんの手が置かれた。

「私もAさんのこと、」

何かを言いかけた途中、さっきまで穏やかな顔をしていた尚さんの表情がいつもの固い表情に変わった。

何かあったのかと後ろを振り向くと、病室の扉のところに白金大臣ともう1人の男の人が立っていた。

「お邪魔だったかしら」

「いえ、決してそんなことは……すみませんが席を外していただけますか」

尚さんは、白金大臣の突然の訪問に動揺することなく、いつも通りに振るまった。

「……は、はい。失礼しました」

こんなに泣き腫らした顔を白金大臣たちに見られたら、私ではなく尚さん、に何をやっていたんだと質問が飛ぶと思い、出来るだけお2人と顔を合わせないように注意して、早足でその場を去った。

それにしても、尚さんはなんと言おうとしたのだろう。
気になるけれど、今戻って聞くことはできない。

……尚さんが家に帰ってきたら聞こうかな。

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