ゼロからはじまるストーリー

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「私は危機管理対策室に戻るけど、貴女はどうする？」

あまりに突然の出来事に呆然としていると、赤塚知事に尋ねられた。

「私も戻ります」

尚さんはエレベーターに閉じ込められ、MERは出動したものの、そこまで大きい事件にはならないと思う。だから別に心配する必要はない。だけど、何か嫌な予感がする。

都庁に車で戻る最中、そんなことを考えていた。
でも、病院に居たって何かできるわけじゃないのだから、そのことは一旦忘れよう。



＊＊＊


訪問に付いてきてくれた彼女に席を外してもらい、スタッフルームの奥に喜多見くんと千晶さんを呼んだ。
今回の目的は表敬訪問ももちろんだけど、音羽尚さんについて喜多見くんに注意喚起しにきた、と言った方が正しい。



喜多見くんと千晶さんに、音羽さんについてどう思うか聞いたところ、2人は、信頼できる、優秀な医師だと答えた。

「2人ともわかってないわね。官僚っていうのはみんな優秀なものなの。でもバカなことをしなくちゃいけないものなの。命令する政治家がバカだから。官僚は政治家の命令には逆らえない。特に天沼幹事長みたいな人にはね」

「誰ですか？」

「政界の影の支配者。厚生労働大臣だった時に臨床学会から闇金を受け取ってたんだけど、バレそうになってこの病院に雲隠れしてる」

わかっているのかいないのか微妙な表情で頷いている喜多見くんに向かって、私はもう1つ注意をした。

「あと、さっき連れてきたあの女の子にも注意して」

「ああ、音羽さんのことですか？どうして？」

どうして彼女のことを知っているのか喜多見くんに聞くと、前にちょっとしたトラブルがあって知り合ったらしかった。

「彼女、多分だけど、音羽尚さんと婚約しているんじゃないかと思うの。だから変に色々喋っちゃダメよ？」

「いや、でも、前に音羽先生が赤の他人って言ってましたよ？」

「馬鹿正直に婚約者って紹介するわけないじゃない。確かに私も確認を取ったわけじゃないけど、とにかく、警戒しておいて損はないでしょ？」

「2人とも心配しなくていいと思いますけどね」

これだけ言ってもまだ呑気なことを言っている喜多見くんに溜息をついた。

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