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日曜日、一応この話を持ちかけたのはこちら側なのだから、万が一でも相手を待たせてはいけないと待ち合わせより少し早く着くようにしたのだけれど、案内された部屋には、もうすでにお相手の、確か音羽さん、が待っていた。
「ごめんなさい、お待たせしてしまって」
「いえ、早く着いてしまっただけです。貴女が謝る必要はありません」
「そう、ですね。確かに……」
そのきっちりとした髪やスーツのせいなのか、厚生労働省に勤めているという情報のせいなのか、はたまたこれがお見合いのようなものだからか、この部屋の空気は張りつめていた。
「高尾Aです。この度は私の祖父が冗談を言って、ご迷惑をおかけしました」
「音羽尚です。その件に関しては別に気にしていません。本当に嫌なら断っていますので。貴女こそよかったんですか、当人のいない間にこんなことになって」
音羽さんは表情を変えずに言った。
「はい、私も大丈夫です。少し驚きましたけど……あの、1つ聞いても?」
音羽さんはこちらに目を向けて、「どうぞ」と言った。
「どうしてこの話を受けようと思ったのか気になりまして。言いたくなければ別にいいんですけど」
彼は少し考えてから口を開いた。
「一言で言えば貴女のお祖父様が私の上司だからです」
それは祖父の発言を上司としての命令だと受け取ったのではなく、出世を考えると、みたいなことなのだろう。
「そういう貴女こそどうして」
「私は、とりあえず一度お会いしてから色々決めようと思ったから……ですかね」
音羽さんはそうですか、とだけ言った。
そうだ、最終的にどうなるは別として、これだけは音羽さんに伝えておこうと思ったことがあったんだ。
「とにかく、私がとても熱心に願っている話ではないので、音羽さんが嫌だと思うなら断っていただいて大丈夫です」
すると音羽さんはしばらく考えた後で、「……私は貴女と結婚するのに反対していません。貴女が嫌なら断れば良いと思いますが」と言った。
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なす(プロフ) - Ashleyさん» 見ていただきありがとうございます。Ashleyさんのおっしゃる通り、この設定ですと妻に統一すべきでしたので、修正させていただきました。ご指摘ありがとうございました。助かりました! (12月17日 12時) (レス) id: 0c8e6ffdee (このIDを非表示/違反報告)
Ashley(プロフ) - 楽しく拝見してます。ひとつどっちなの?という点があります。籍を入れていれば(婚姻届を出した)婚約者ではなく妻ですよね?それに婚約中は苗字変えないので、妻に統一すべきかと思います。 (12月16日 4時) (レス) @page36 id: c473320f23 (このIDを非表示/違反報告)
ローゼンクローネ(プロフ) - 今日も癒されましたぁ! (7月9日 21時) (レス) @page29 id: aa728b33d1 (このIDを非表示/違反報告)
なす(プロフ) - sho.kano0129さん» 素敵なコメントありがとうございます!とっても嬉しいです! (7月6日 8時) (レス) id: 0c8e6ffdee (このIDを非表示/違反報告)
なす(プロフ) - ローゼンクローネさん» いつもありがとうございます!そう言っていただけて良かったです! (7月6日 8時) (レス) id: 0c8e6ffdee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なす | 作成日時:2023年5月18日 13時