ゼロからはじまるストーリー

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「Aちゃんもそろそろ結婚する年齢でしょう？」

またその話か、とあからさまに嫌悪感は出さないけれど思う。毎回毎回こうやって結婚結婚言われるから、実家にはあまり帰りたくないのだけれど、どうしても用があって帰らざるを得なくなった。

「そうだね」

「誰か良い方はいないの？」

「いたらしてる」

あくまでも別に結婚したくないわけではなく、する相手がいないのだ。職場が女性ばかりというわけではないけれど、ただただ単純に出会いがない。

「むしろ紹介して欲しいくらい」

冗談めかして言うと、母は「あら、それならいるわよ」と楽しそうに言った。

「……え、え？待って、どういうこと？」

「お父様がね、職場でこの方と会った時にAちゃんの話しをしたらしいの」

差し出された画像には、ムッとした表情を浮かべているものの容姿端麗な男の人が写っていた。

「それで？」

「お互い独身ならせっかくだしうちの孫と、なんて冗談で言ったら、別に構いませんよって言われたらしいの」

それは上司に言われたから同意したってことで、おそらく出世に有利とか、利益云々を考えた上での返答なのでは、なんて思ったりもしたけれど、この話題を振ったのは他の誰でもない私自身だし、それにどうせ出世目的だろうから断るなんて言える立場ではない。

「……せめて本人と話してから決めるものでしょう。結婚って人生に関わるものなんだから」

「そうよね、だから来週の日曜日に2人でお会いしてきたら？」

来週の日曜日って急に言われても。それに確か、

「家族で食事に行くって話じゃなかった？」

「もともとAちゃんと音羽さんの食事会だったのよ。本当はAちゃんが当日来ないなんてことがあったら相手に失礼だから、直前まで内緒にしておこうと思ったんだけど、Aちゃんが結婚に乗り気みたいだったから今言ったの」

色々と文句を言いたくなるのをなんとか堪えて、「分かった。行ってみるね」と引き攣った笑顔で返した。

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