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そして、週末。
ついにお父さんに実弥を紹介する日がやってきた。
家の前まで送ってくれることはよくあったけど実弥が私の家に上がるのは初めてのことだった。前日に宮里さんが張り切って掃除をしたりお茶菓子を用意していたっけな。
宮里「まぁ、風ばし…いえ。不死川さんお久しぶりです」
出迎えてくれた宮里さんは、私からのワガママで今日この場にいてもらうことになっている。いまは私の保護者のような存在だから。
「本当にお久しぶりです、お元気そうで」
今世では初めて顔を合わせる2人は懐かしさに浸っていた。
宮里「旦那様は客間でお待ちです」
『ありがとう宮里さん』
いつもとは違い、きちんとネクタイを閉めたスーツ姿の実弥に多少の違和感はあれど体格のいい彼は何を着ても様になる。なんて呑気なことを考えなければやっていけない程私も緊張していた。
コンコン
『お父さん、Aです。入るよ』
「入れ」と、厳格な声がしたのでゆっくり扉を開き、中へ入った。
あの喧嘩以来顔を合わせてもろくに会話をしなかった私たち親子は相変わらずギクシャクしている。
仕事着のまま座るお父さんは、私が無理言って時間を作らせたためこの話が終わればすぐ海外へ飛び立つそうだ。
「はじめまして。不死川実弥と申します。この度はお忙しい所お時間を割いていただき____」
姿勢をただし、真っ直ぐお父さんを見据えた実弥は驚くほど丁寧な言葉遣いで挨拶を交わした。
座るように促され、お父さんの趣味で買った上等なソファに腰掛けてすぐ、宮里さんがお茶を運んできて実弥はそれにも丁寧にお礼を述べた。
「君は、娘の恋人か?いくつなんだ」
「はい、今年で23歳になりました。Aさんとは半年ほど前から結婚を前提とした真剣なお付き合いをさせていただいています」
いつもの間延びした話し方ではなく、きちんと締まりのある言葉遣いでむず痒い。
「5歳差…。君、Aはまだ高校生だと分かっているのか?」
私たちからしたら問題でもなかった年齢の話。
世間体をよく気にする父からしたら引っかかる所なのだろう。冷たく言い放った父の言葉と視線は実弥に真っ直ぐ降り注ぐ。
「娘さんの大切な時期だということは十分理解しているつもりです。しかし、私はAさんのことを一人の女性として、一人の人間として慈しみ、寄り添いたいと考えております。お父様にはこのような形でのご挨拶になってしまったこと、お詫び申し上げます」
『実弥…』
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rann(プロフ) - すべて読ませていただきました!キャラクターとの会話が一つ一つ深くて…もう言葉では言い表せないくらい素晴らしい作品でした!更新を追って見れなかったのが悲しいです…素敵な時間をありがとう! (10月6日 2時) (レス) @page50 id: 22b59ed309 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 柑橘蛍さん» コメントありがとうございます。あの二人は一生一緒なんです、なにがあっても(;_;) (2021年2月6日 19時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 不死川さんと…また…一緒に…(尊死) (2021年2月5日 16時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 冬の瑠璃さん» ありがとうございます(;_;)知らないフリ、も読んでくださり嬉しいです。なんとなく話の構造は練れてますのでもうしばしお待ちください、、! (2021年1月9日 23時) (レス) id: 950c111f3d (このIDを非表示/違反報告)
冬の瑠璃 - とても感動しました!私、“知らないフリ”も見てます!大ファンです!お話待ってます! (2021年1月8日 18時) (レス) id: ee38c723d2 (このIDを非表示/違反報告)
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