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びしょびしょになった私たちは風邪をひく前に急いで実弥のアパートにもどってお風呂を済ませた。




クーラーで冷えた部屋で布団にくるまるのが好きな実弥は、私を腕に抱いて眠る。

ふと私の唇を指でなぞった。

「…すっぴんも、いいな。あの頃みたいで」

『へ』

「いや、今は今でいいんだけどよ。鬼殺隊の頃は化粧っ気なかったろ?」

『うん』

「すっぴんだと、あの頃をよく思い出せる」

穏やかにそう笑った実弥。

『…つい、周りに合わせたメイクしてたけど、もう必要ないよね』

夢に見る実弥を探すために夜の街に頻繁に出かけていたあの頃。
もうそんな必要はないのだから、ある程度の化粧でいい。

『でもやっぱ、濃いメイクに慣れてるから薄くすると顔が寂しいんだよね』

苦笑いをすると、じっと藤色の瞳がこちらを見る。

「…どんなお前でも、綺麗だと思うけどなァ」

さりげなく漏れた甘い台詞は私を赤面させるのには十分の威力を持つ。

『実弥…』

「ッ…」

愛おしくて、キスをした。
形のいい、柔らかい唇に夢中になる。

『…んっ、ふ』

物足りなくて、ゆるゆると舌を入れてみればカプリと噛まれ、あっという間に組み敷かれた。

「…は…」

目を細め、鋭くなった眼光に捉えられて動けない。

『はぅ…んぁ』

一気に主導権を握られてしまい、大人のキスにただ着いていくのに必死になっていた。
左右の耳元で肘を着き、貪るようなキスに溺れる。

『んぅ、あ、すとっ、ぷ…』

「あ?」

『…甘い…』

「…お前もだいぶ甘ェ」

ちぅ、と音を立てて首筋に吸い付かれ鼻のかかった吐息が漏れた。

「煽ったのは、Aだかんな…」

『ひゃあ』

しゅるりとTシャツに侵入してくる手が冷たくて、過剰な反応をしてしまう。

「A…」

ゴリ、と太ももに押し付けられたそれはもう限界を迎えていた。

そっと服越しに撫でると、実弥は苦しそうに顔を歪めた。

「ッくぁ…」



『ねぇ、我慢しないで…来て』

「…そうやって、いつも煽りやがって…」


前髪を鬱陶しそうにかき揚げ、見下ろされる。


「どうなっても知らねェぞ」


いつもより何倍も低い掠れた声。

ドクンと脈打つ心臓の音と、ギラついた目をして覆いかぶさった実弥の香り。



何度しても慣れないこの行為は私たちをおかしくする。



激しく求め合う度に熱くなる吐息とか



月の光を反射させる熱を帯びた瞳とか



ドロドロに溶けた脳はもう機能しない。






あなたに溺れるしか出来ないから。

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rann(プロフ) - すべて読ませていただきました!キャラクターとの会話が一つ一つ深くて…もう言葉では言い表せないくらい素晴らしい作品でした!更新を追って見れなかったのが悲しいです…素敵な時間をありがとう! (10月6日 2時) (レス) @page50 id: 22b59ed309 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 柑橘蛍さん» コメントありがとうございます。あの二人は一生一緒なんです、なにがあっても(;_;) (2021年2月6日 19時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 不死川さんと…また…一緒に…(尊死) (2021年2月5日 16時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 冬の瑠璃さん» ありがとうございます(;_;)知らないフリ、も読んでくださり嬉しいです。なんとなく話の構造は練れてますのでもうしばしお待ちください、、! (2021年1月9日 23時) (レス) id: 950c111f3d (このIDを非表示/違反報告)
冬の瑠璃 - とても感動しました!私、“知らないフリ”も見てます!大ファンです!お話待ってます! (2021年1月8日 18時) (レス) id: ee38c723d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年7月6日 2時

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