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俺の目を見つめる丸い瞳はユラユラと揺れていた。

『全部捨てていいから、どこかに2人で逃げようよ』

子供のように、すがるように。
期待と不安を込めた目は夕日を反射させた水面の光をうつして、切なげだった。

「A、それは出来ねェ」

俺の言葉に傷ついたように眉を下げ、言葉を詰まらせた。

『…私が子供だから?』

「違う。A。俺だってお前といたい、離れたくない。でもな、そんな俺のエゴを全て拭いされるくらいお前が大切なんだよ」

『それじゃあ…』

「A、俺はお前を愛しているからこそ、世界を広げてきて欲しい」

いかにも教師らしい視点だった。
こんなに才能があって、スポンジのように知識を吸収できるうえに勉強への意欲はあるのに。
それなのに俺のせいで行かない、なんてことあってたまるか。

「お前が、心のどこかで行きたい気持ちがあるのにそれを蓋してしまう原因が俺だと、俺は悲しい」

唇を噛んで俯いた。

「もう、素直に、ワガママに生きていいんだぞ」

諭すように言えば、Aの肩は揺れた。

「もう、お前はどこにでもいる18歳なんだから」

『ッ…うぅ…』

「あー、泣くなよ」

泣きそうなお姫様を胸に抱いてやるとすぐにしがみついた。

「それに、たった2年離れるくらいでAはダメになっちまう女だったかィ?」

『そうだよ、ダメな女だよ』

「そーかい、それじゃあ結婚してから大変だぜェ?教職は出張も多いしなかなか時間つくれねぇぞ?」

『ッ…』

まあそれが事実であろうと、意地でもAとの時間を作るに決まっている。悔しそうに顔を歪めたAが可愛くて、思わず意地悪を言った。

「今すぐとは言わねェ。ただ、俺のことなんていつでも捨てられるくらいの女になれェ。約束出来るな?」

『うん』

これは紛れもない本心。
“結婚”という言葉に焚き付けられたAはようやく頷いた


『…実弥に似合う女の人になりたい』


結局俺が軸となってしまったが、それでもいい。

やっと自分の心の声を素直に聞けたんだ。


『…薄明』

「あ?」

『太陽が地平線に沈んでも、急に真っ暗になるわけではないでしょ?しばらくは残る薄明かりを薄明と呼ぶの。夜の始まり』

「へェ」

『鬼殺隊の名残かな、この時間帯は気が引き締まるの。さぁ、行くぞって』

「…確かに、そうだなァ」

『…実弥、私頑張ってみるね向こうで』

気持ちの消化にまだ時間がかかりそうだったが、コイツは大丈夫だ。

俺の知る限り、1番強い女だから。

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rann(プロフ) - すべて読ませていただきました!キャラクターとの会話が一つ一つ深くて…もう言葉では言い表せないくらい素晴らしい作品でした!更新を追って見れなかったのが悲しいです…素敵な時間をありがとう! (10月6日 2時) (レス) @page50 id: 22b59ed309 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 柑橘蛍さん» コメントありがとうございます。あの二人は一生一緒なんです、なにがあっても(;_;) (2021年2月6日 19時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 不死川さんと…また…一緒に…(尊死) (2021年2月5日 16時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 冬の瑠璃さん» ありがとうございます(;_;)知らないフリ、も読んでくださり嬉しいです。なんとなく話の構造は練れてますのでもうしばしお待ちください、、! (2021年1月9日 23時) (レス) id: 950c111f3d (このIDを非表示/違反報告)
冬の瑠璃 - とても感動しました!私、“知らないフリ”も見てます!大ファンです!お話待ってます! (2021年1月8日 18時) (レス) id: ee38c723d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年7月6日 2時

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