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『きゃー、冷たいね！』
さっきまでの重い空気はどこへ行ったのやら。
『いがいと水キレイでよかったー』
手のひらから零れ落ちた水滴が作る水面の揺れ。
観念した実弥はザブザブと私の側へ歩いてきた。
「はァ…、頼むから転ぶなよォ」
『…えいっ』
過保護な発言とは裏腹に足で水面を蹴りあげれば実弥のTシャツを濡らした。
「バカヤロ、お前ふざけやがって」
『ぎゃあ！冷たい！！』
まんまと仕返しを喰らい、制服が湿った。
イタズラ心がニョキニョキと芽生え、もっと強く水面を蹴ろうとた。
『おとなげなーい！！』
すると、見事に体制を崩した私は後ろへ倒れそうになった。
「うわ、オイあぶねッ…？！」
びしょ濡れになるのを覚悟して目を閉じていたが、膝と手だけが濡れていた。
『…え？』
恐る恐る目を開けば、実弥が何故か私の下敷きになって尻もちを着いていた。下半身はしっかり水に浸かり、背中までしっかり濡れていた。
しっかり注意を受けたのにこのザマだ。
サァッと血の気が引く。
『あっ、実弥…ごめ…』
「…ﾌｯ､」
『え』
「ははッははは、あはははッ」
とうとうおかしくなったのか。
空を仰ぎ、声を上げて大笑いする実弥。
普段声をあげて笑うことが滅多にない彼がこんなに笑うなんてないから、釣られて私も笑ってしまう。
『…んふっ、ふふふ、やっちゃったね』
「あー笑った、制服濡れてねぇか？」
一息ついた実弥は手を伸ばして私の頬の水滴を拭った。
『おかげさまで』
夕日を背にびしょ濡れになった2人はあまりに滑稽で、もうどうにでもなれ、と実弥に抱きついた。
せっかく庇ってもらったのに悪いけど、いいよね。
動く度にちゃぷん、と涼しい音をたてる水中でスカートは揺れた。
「…はァ」
ため息をついている割に穏やかな表情の実弥は、濡れた手を1度拭いそっと抱き返してくれた。
『お父さんがね、2年間アメリカに留学して欲しいって。そしたら自由に生きていいって…。』
ボソボソと話す私の声にただ黙って耳を傾けてくれる。
『…私の通知表見て…嬉しかったんだって』
ぎゅ、と実弥のTシャツを握れば、髪を撫でてくれる。
『私、知らないところでお父さんに認めてもらってた。アメリカ留学も、期待してくれたからなのかな。
アメリカに行けば色んなことが知れるって分かってるけれど…実弥を手放す勇気が…私にはない』
「…」
『私はいつも置いて行ってばかりだ』
実弥は悔しそうに顔を歪めた。
『実弥、連れ出してよ』
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rann(プロフ) - すべて読ませていただきました！キャラクターとの会話が一つ一つ深くて…もう言葉では言い表せないくらい素晴らしい作品でした！更新を追って見れなかったのが悲しいです…素敵な時間をありがとう！ (10月6日 2時) (
レス) @page50 id: 22b59ed309 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 柑橘蛍さん» コメントありがとうございます。あの二人は一生一緒なんです、なにがあっても(;_;) (2021年2月6日 19時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 不死川さんと…また…一緒に…（尊死） (2021年2月5日 16時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 冬の瑠璃さん» ありがとうございます(;_;)知らないフリ、も読んでくださり嬉しいです。なんとなく話の構造は練れてますのでもうしばしお待ちください、、！ (2021年1月9日 23時) (レス) id: 950c111f3d (このIDを非表示/違反報告)
冬の瑠璃 - とても感動しました！私、“知らないフリ”も見てます！大ファンです！お話待ってます！ (2021年1月8日 18時) (レス) id: ee38c723d2 (このIDを非表示/違反報告)
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