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恐怖で動けなかった私の前に風のように現れたのは、夢に出てきたあの人。

昔宮里さんに読んでもらった絵本に出てきた騎士みたいだった。




ひどく居心地のいい人だった。


ずっと昔から知っているような。



いつものひどい焦燥感は微塵も感じなかった。

運命さえ感じた。


このままお別れ、なんてしたくなかった。
人生で初めて男の人に連絡先を聞いた。

さっきまでの恐怖なんてどこへ行ったのだろう。

知らない高揚感。
胸が心地よく高鳴っていた。



話を聞けば不死川さんは寿美のお兄さんだということが判明した。
そうか。この安心感は寿美と重ねていたからか。


なんだ、そういうことか。


でも、それだけなのかな。


ふいに呼ばれたAという名前。
その視線は怖いくらい優しかった。



ドクンッて、心臓が跳ねた。

少女漫画に出てくるような可愛らしい物じゃない。痛みを伴うような、苦しくなる胸の痛み。

なんで?


“A、愛してる”


ああ、また。

また知らない景色。



やばい、気持ち悪い。


『うっ』


またあの吐き気。
こんな時に、ほんとタイミング悪い。
うずくまる私をすごく心配してくれてる。申し訳ない…

「もうちっと我慢できるか?」

『え?』

「家まで送る」

予想外だった、優しいんだな不死川さん。見た目ちょっと怖いけど

「ストーカーなんかしねぇから安心しろ。住所言えっか?」

びっくりした顔しちゃったから気を使わせちゃったかな。
寿美のお兄さんじゃなかったら断っていたけれど、あの寿美のお兄さんだからこそあっさり信用出来た。

『ありがとうございます…住所は_____』

ナビを打ち込む時に見えた手には細かい傷があった。
それを見てまた頭が痛くなった。

「ベルトしろ、辛くなったら言え」

『はい…』



少し世間話をしてると、実弥さんが心配そうにこっちを見た。
困ったように眉を下げて。その顔にまた胸が音を立てた。


「体調はどうだ」

『もう大丈夫です、ご心配お掛けしました』

「ならいい」

『…昔から、よくあるんです』

「…病気かァ?」

『いや、そんな大層なものではないんですけど。なにか事ある毎に吐き気とか、頭痛とか…。信じられないと思うんですけど…知らない記憶みたいなのが頭に流れたりするんです』

「…信じるぜ、その話」

厳格な雰囲気の実弥さんは意外にも信じてくれた。

「また、詳しく聞かせてくれェ」

気がつけば車は私の家の前に止まっていた。

9→←7



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パチ麻呂(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!近いうちに続編公開致します、もう少しお待ち頂ければ幸いです! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - とっても面白かったです。続きも楽しみです! (2020年7月4日 20時) (レス) id: 7a18dbf6fa (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!次の章まで時間が空いてしまうかもしれませんが、幸せな2人がかけるように準備頑張りますので、楽しみに待っていてください(;_;) (2020年7月2日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - 毎回更新楽しみにしています!!優しい実弥さんも夢主さんも絶対に幸せになってほしい(*´∀`*) (2020年7月2日 3時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ぽんちゃんさん» 夢主ちゃんの家庭ならありそうですけど、実弥さんはしっかり自立した成人男性ねさであり、きっと親からも信頼されているので、ないんじゃないかな!と解釈しております! (2020年6月27日 4時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年6月3日 5時

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