7 ページ9
『お、お名前は…?』
コイツに今更自己紹介なんてしたくはないが仕方ない
「…不死川、不死川実弥だ」
『え!』
「んだァ?」
『…妹さん寿美って名前だったりしませんか?』
「ハハッ、そうだァ、寿美の友達かァ」
妹の友達がAと来たか。全く持って盲点だった。
灯台もと暗しとはまさにこれだ。
「そうかァ、Aと寿美が…」
しまった、つい名前で呼んでしまった。
予想通り固まるA
「あ、その、わりぃ、」
セクハラなんて言われたら1発アウトだ。
『いや、そのままで。Aって、よんでください…』
赤くなって俯いた仕草に思わず心臓がおかしな音を立てた。どこの少女漫画だよ。
『うっ…』
さっきまで楽しそうに笑っていたAは急に顔を青くした。
「おい、どっか痛むか?」
『いや、ッ、大丈夫です…』
…知らない男に絡まれた直後だ、気分が悪くなるのも仕方ない。
「もうちっと我慢できるか?」
『え?』
「家まで送る」
『申し訳ないです…!』
しまった、また距離感を間違えた。驚いた顔するなよ。
「ストーカーなんかしねぇから安心しろ。住所言えっか?」
『ありがとうございます…住所は_____』
急いでナビを打ち込んでハンドルを握った。
「ベルトしろ、辛くなったら言え」
『はい…』
『あの…』
しばらく道を走っているとAは口を開いた。
『どうして見ず知らずの私を助けてくれたんですか?』
「…さァな」
前世でお前と婚約していたから、なんて言えるわけが無い。言ったところで速攻通報されて俺の人生は終わる。せっかく出会えたのに怖がらせる趣味はねェ。
本当は今すぐ抱きしめてそのまま閉じ込めてしまいたいのに。俺のことを何も覚えちゃいねぇ。
何年も探し続けたのにこうも簡単に出会い、キレイさっぱり忘れられているなんて誰が思うか。
柄にもなく怖気付いている。
フゥーと、深く深呼吸してハンドルを握り直した。
『不死川さんは「実弥」…え?』
「実弥でいい、寿美と混ざるだろ」
『はい…、さ、実弥さん』
100年ぶりに聞いた俺の名前を呼ぶ声。
ああ、ずっと聞きたかった。
思わずじわりと目頭が熱くなった。
『実弥さんはいくつですか?』
「22」
言葉遣いや仕草に感動さえ覚えるが、悟られないように冷静を装う自分を褒めてやりたい
「体調はどうだ」
『もう大丈夫です、ご心配お掛けしました』
「ならいい」
『…昔から、よくあるんです』
小さな声で語り始めたそれに耳を傾けた。
436人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パチ麻呂(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!近いうちに続編公開致します、もう少しお待ち頂ければ幸いです! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - とっても面白かったです。続きも楽しみです! (2020年7月4日 20時) (レス) id: 7a18dbf6fa (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!次の章まで時間が空いてしまうかもしれませんが、幸せな2人がかけるように準備頑張りますので、楽しみに待っていてください(;_;) (2020年7月2日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - 毎回更新楽しみにしています!!優しい実弥さんも夢主さんも絶対に幸せになってほしい(*´∀`*) (2020年7月2日 3時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ぽんちゃんさん» 夢主ちゃんの家庭ならありそうですけど、実弥さんはしっかり自立した成人男性ねさであり、きっと親からも信頼されているので、ないんじゃないかな!と解釈しております! (2020年6月27日 4時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ