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キメツ学園で数学教師として働く俺は、残業に見舞われ帰路に着いたのは夜の9時を回った頃だった。

「チッ」

はやく帰りたい時に限ってひっかかる信号。

にしてもひでぇ雨だ。


たまたま窓から歩道を見たら、傘もささず雨の中走る女子高生に目がとまった。


綺麗に伸びた長い黒髪。


それは100年前に愛した最愛の女性を彷彿させる姿だった。

「Aに会いてェな…」

ハンドルに頭を押し付けて項垂れた。

神様がいるとしたら、だいぶ酷なことをしてくれる。
あれ程心から愛した人と離れ離れにしてくれるなんて。


今世で物心着いた頃からなんとなく鬼殺隊の記憶はあった。ハッキリと思い出したのは玄弥が産まれてから。その時にAとまた出会う決意をした。


信号が青に変わり、アクセルを踏もうとした。が。
先程目で追っていた女子高生が怪しい男に絡まれていた。

面倒事に首を突っ込むのは避けたい性分だったが、Aと姿を重ねた女子高生を放っておくという選択肢はなかった。
適当な所に車を停めて、ドアを開いた、その瞬間

『やめてっ』


「…A?」


雨音の奥から聞こえたその声は、間違いなくAの声だ。
100年前からずっと焦がれていたんだ。
ずっとその声を頼りに生きていたんだ、聞き間違えるわけが無い。

傘もささず、車の鍵もかけず、無我夢中で走った。


A、A、A






その汚ェ手でAに触れるな。



男の腕を掴むと、ミシッと鈍い音をたてた。

「ヒッ!」









「オイ、何してやがる」





Aを俺の背後に隠すように引き寄せて男を睨みつける。



「う、うわぁぁぁ!」


皮肉なことにこの悪人面に恐れをなしたのか。
腰を抜かせた男は水たまりの上に座り込んで、這うようにして逃げていった。







「チッ、クソがァ」







『…す、すみませ、ん』



怯えた声で、俺から離れたA





その目を見て愕然とした。




俺の知ってるAは、俺のことそんな目で見ねぇ





それは他人に向ける目だ。






鈍器で頭を思い切り殴られたような感覚だった。






嘘だろ?






俺の事






覚えてねぇのか?




『あ、あの…』


その愛しい声に一瞬で色を失った世界に引き戻された。

「…平気か」

やっとのことで発した声は情けなく震える。

『は、はい、ありがとうございます…』



雨で濡れた髪からポタリと水滴が落ちた。




んなことあるかよ

100年待ったんだ。


とんだ地獄じゃねぇか。

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パチ麻呂(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!近いうちに続編公開致します、もう少しお待ち頂ければ幸いです! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - とっても面白かったです。続きも楽しみです! (2020年7月4日 20時) (レス) id: 7a18dbf6fa (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!次の章まで時間が空いてしまうかもしれませんが、幸せな2人がかけるように準備頑張りますので、楽しみに待っていてください(;_;) (2020年7月2日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - 毎回更新楽しみにしています!!優しい実弥さんも夢主さんも絶対に幸せになってほしい(*´∀`*) (2020年7月2日 3時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ぽんちゃんさん» 夢主ちゃんの家庭ならありそうですけど、実弥さんはしっかり自立した成人男性ねさであり、きっと親からも信頼されているので、ないんじゃないかな!と解釈しております! (2020年6月27日 4時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年6月3日 5時

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