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またこうして腕の中で眠るAを再び見つめる夜が来るとは。先程まで俺の腕の中で乱れていたAはあどけない顔をしていた。

規則正しく上下する肩に布団をかけ直してやると、モゾモゾと俺に擦り寄る。

今世のAには鬼にやられた傷跡や、鍛錬で負った擦り傷なんてひとつもない白くて綺麗な肌だった。



眠る直前、『幸せなの』とだけ言って泣いたA。
まつ毛はまだほんのり湿っている





「…かわいいなァ」


小さな頭を撫でると、ゆっくりと目を開けた。

「わりィ、起こしたか」

『ううん、平気』

俺の胸元に擦り寄ったAを優しく抱き寄せる


『実弥、これからどうしようか』


“これから”というのは今この時間の話ではない。
もっと長い目で見た“これから”の話だ。

「…約束、覚えてるよな」

『うん』

いくつも交わした約束の中で、お互いの思う約束は間違いなく、結婚の約束だ。

「お前はまだ学生だ、未来もある」

『…そうだね』

諭すように言うと、表情を曇らせた。

「んな顔すんな、離れるつもりなんかねェからよ」

『…ん』

「その時が来たら、もう1回ちゃんと言うからよ。だから待ってられるな?」

子供みたいに唇を尖らせて、ゆっくり頷いた。

本当は俺だって今すぐAに結婚を申し込んでどこか遠くに2人だけで暮らせたらいいとさえ思った。

けれど、今世の俺には家族がいる
コイツには前世では過ごせなかった時間がある。

もっといろんなモンを見て欲しい
思っているよりも世界は広いんだ。

知って欲しいことも、見て欲しいものも、感じて欲しいものも。

たくさんあるんだ。


Aが命をかけて守ったこの世界は美しい。

それを知ってもらいたい。



ただ、それを知る過程において俺はAの隣にいたい、とはもちろん思う。


「だから、しばらくはお前の彼氏でいたいんだけどよォ」

こういったことは柄じゃねぇけど仕方ない。

オンナって言うのは言葉にして伝えて欲しがるって、寿美が熱弁していたっけなァ


「A、好きだ。俺と付き合ってくれねェか?」


きちんと目を見て言えば、Aは嬉しそうに笑顔を見せた。なんの捻りもないその告白に大満足、と言わんばかりの顔だった


『うん。私も大好き。またよろしくお願いします』


まだあどけなさの残る笑顔がたまらなく愛おしくて、思わずキスをする。

何度も角度を変えて、この熱を忘れないように、幸せを噛み締めるように口付けた。

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パチ麻呂(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!近いうちに続編公開致します、もう少しお待ち頂ければ幸いです! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - とっても面白かったです。続きも楽しみです! (2020年7月4日 20時) (レス) id: 7a18dbf6fa (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!次の章まで時間が空いてしまうかもしれませんが、幸せな2人がかけるように準備頑張りますので、楽しみに待っていてください(;_;) (2020年7月2日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - 毎回更新楽しみにしています!!優しい実弥さんも夢主さんも絶対に幸せになってほしい(*´∀`*) (2020年7月2日 3時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ぽんちゃんさん» 夢主ちゃんの家庭ならありそうですけど、実弥さんはしっかり自立した成人男性ねさであり、きっと親からも信頼されているので、ないんじゃないかな!と解釈しております! (2020年6月27日 4時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年6月3日 5時

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