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実弥、実弥、実弥



どこにいるの?






人通りのない川沿いの土手を走った

藍色の空が夜を告げる。




ここを曲がれば、実弥の家






と思った瞬間









仕事着の実弥が姿を現した。









見つけた





実弥が住むアパート
その目の前にある桜の木のすぐ下








藤色の瞳に私を写した瞬間、それは大きく見開かれた。




「ッオイ?!」



カバンを投げ捨てて、めいいっぱい手を伸ばす。









『ッ…!!!』









もう離さない。



絶対に離れない。





ぶつかる勢いで抱きついた。









私の勢いに耐えきれなかった実弥は道沿いの芝生にドサリと倒れ込んだ。

青い草の香りのなかに実弥の香りがいっぱいに広がる








『実弥…』








「おま、今、…名前…」







心做しか震えている実弥の声


覆い被さるように倒れた私は、実弥の肩に顔を埋めたまま喋る。






『…ごめんなさい、ずっと思い出せなくてごめんなさい』






「なぁ、A、…思い、だしたのか…」





私の背中と頭を守るように抱きとめていてくれた実弥。
その手は私の肩に移動して、起こそうと促した。




『うん…思い出したよ』




恐る恐る顔を上げると、





「ッ…A…!」






顔をぐしゃぐしゃにさせて泣く実弥と目が合った。





『…ごめんね…うぅ、本当にごめんねぇ…!』





「ッおっせぇんだよ、待ちくたびれたろォ…!」





またあなたを泣かせてしまった



『うん、100年も待たせた』



最後にみたあなたの顔は
死にゆく私を抱きしめて泣く顔だったね



「…もう離さねェ、絶対に離さないから…離れんなよ…」


絞り出すようにだした声があまりにも切なくて、苦しくて。

この優しい人がいままでどれだけの地獄の中で過ごしていたのか。
想像を絶する苦しみに違いない。
実弥は優しいから、ずっと私を探してくれていた。

ずっとずっと待ってくれていた。



『うん、離れないよ…もう二度とあなたを置いていかない、ずっとそばに居る』




この人の手を取れば、永遠にどこへでも行ける。




もう何にも負けない。
運命になんて負けない。


どれだけ打ちのめされようと

為す術なく立ち尽くす時があろうと

絶望で溢れていようとも


あなたがいるから。





あなたが私の光だから。







「A、愛してる…」





『うん、実弥、愛してるよ』








100年ぶりの口付けは、涙が出る程優しくて




苦しいほどに愛おしかった。

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パチ麻呂(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!近いうちに続編公開致します、もう少しお待ち頂ければ幸いです! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - とっても面白かったです。続きも楽しみです! (2020年7月4日 20時) (レス) id: 7a18dbf6fa (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!次の章まで時間が空いてしまうかもしれませんが、幸せな2人がかけるように準備頑張りますので、楽しみに待っていてください(;_;) (2020年7月2日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - 毎回更新楽しみにしています!!優しい実弥さんも夢主さんも絶対に幸せになってほしい(*´∀`*) (2020年7月2日 3時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ぽんちゃんさん» 夢主ちゃんの家庭ならありそうですけど、実弥さんはしっかり自立した成人男性ねさであり、きっと親からも信頼されているので、ないんじゃないかな!と解釈しております! (2020年6月27日 4時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年6月3日 5時

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