獅 子 奮 迅 Another【不死川実弥】

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宇髄「知らなきゃ幸せってか」

「…あァ」




宇髄「じゃあ、楽しかった思い出も、幸せな思い出もアイツには必要ないのか」




珍しく低い声で発せられる宇髄の言葉に生唾を飲み込む。


宇髄「…短くても家族と過ごした思い出も、命を掛けて戦ったことも、胡蝶や甘露寺との思い出も、他の隊士だってそうだ。アイツにはたくさんの思い出があんだろ」

「…」

宇髄「お前との思い出も全部なかったことにしちまうのか。花火大会のとき、Aすげぇ嬉しそうにしてたじゃねぇか。お前が贈った簪、嬉しそうに自慢してたろ」


走馬灯のように頭を駆け巡るAとの記憶。

嬉しそうに笑うAと食卓を囲んだ日
お互い汗を流しながら鍛錬した日
疲れきった顔で布団に潜った日
目を輝かせながら祭りに行った日
泣いてるAに結婚を申し込んだ日

自信を失うと俺にだけ見せる弱さ


拗ねると絶対目をそらす癖


俺にしか見せない可愛い笑顔


嬉しい時に流す、世界一綺麗な涙



俺は1つも忘れていない。


なぁ、本当に忘れちまったのかよ。




あんなに愛し合ってただろ俺ら。


お前が先に逝ったこと1ミリも恨んじゃいねぇんだ

Aの所に行ける日をどれだけ心待ちにしていた事か。


お前が居なくなってから地獄のような日々だった。

それでも生きていられたのは

お前と来世は結ばれるって、約束したから。



それなのにA、お前ってやつはよォ…




宇髄「…あの時のAと今のA、なにが違う？」

「…ｯ」

柄にもなく涙が出そうになり、慌てて宇髄から目を逸らした。


宇髄「なァ、悲しいんだろ。Aが忘れてること。別に強がんなくていいじゃねぇか。俺らの仲だろ」

悲しい。図星かもしれない。

「ばァか、誰がお前なんかに…」

宇髄「へいへい、言ってろ」

「ヤメロ」

ぐしゃぐしゃに髪を撫でられながら睨みつけた。


宇髄「強がりな実弥チャンの為に今日は奢ってあげよっかな〜？」

「じゃあお前ん家の近くのとこいくかぁ」

宇髄「バッカ、あそこ高いじゃねぇかよ！」

「だから行くんだ、奢りって言ったろ」

宇髄「さっきまでの地味な空気どこいったよ！」

「さぁな、ほらさっさと支度しろ」

宇髄「オイ、採点は」

「終わってんだよ。お、ちょうどいい煉獄も連れてくか」

宇髄「はぁ？」

「…俺らの仲だろ？」

宇髄「うわ、ここで使うのはズリぃわ！」


結局、俺、宇髄、煉獄、冨岡のいつものメンツでいつもの居酒屋へ行ったのだった。

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