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実弥さんの家に行ってから数日。
はね上げたアイライン、いつもよりしっかりしたマスカラと、深い赤のリップ。
普段は付けないピアスを何個も付けた。
「あっれぇー、Aじゃーん」
「どしたの、久しぶりぃー」
間延びした声で話しかけてくるのは、私の夜遊びをする時の仲間。果たして学生なのか、はたまたどこかで仕事をしているのか。
名前と顔だって一致してない人もいるし、来る度に仲間が増えたり減ったり。ただ年齢が近いからこうやって集まって騒いだり喋ったり。
未成年なのに酒やらタバコに手を出したり、中にはクスリをやってるやつがいるらしい。私は大抵コーラ飲んでるだけだけど。
それでもここに来るのは、夢に出るあの人探しってのもあった。
でもやっぱり、家に帰るのが嫌な時はなんとなくここに顔を出す。
実弥さんと出会ってからはなんとなく避けていたこのネオン街。
父親と上手くいかなくなった途端に、前の生活に逆戻りだ。
『あーあ』
せっかく今まで楽しかったのにな。
「ねぇA、コータくん達がカラオケ行こだってぇ、どうするぅ?」
『んー、任せる』
「うっへ、相変わらず冷めてんねぇAはー」
「Aちゃんはそこがいいんじゃん、クールビューティーって感じでよ!」
コータと呼ばれる男に肩を組まれて心底不快。
あー、…ムカつく。
『あはは、触んないでー』
自分でも驚くほど棒読みのセリフで腕からすり抜ければコータは違う女の子の元へフラフラと歩いて行った。
前まではそれなりにここを楽しんでたのにな。
脳裏にチラつく実弥さんの顔。
思い返せば、寂しそうに笑う実弥さんの笑顔ばかりだ。
浮かんだその顔はやっぱり胸をじくじくと痛めるから苦手だ。
『はぁ、今日は気のらないわ、帰る』
こんな所にいても実弥さんの事ばっかり考えてしまう。
家に帰って本でも読もうかな、いやもう寝よう。
「えー、帰んのぉ?」
「はぁ、Aちゃん来ねぇの?マジかよ」
『ごめんねー、また誘ってー』
ヒラヒラと手を振って駅に向かって歩く。
スマホの画面を見れば終電まで間に合いそうだった。
イヤホンを耳にさして改札を抜けてホームに並ぶ。
『実弥さんからの連絡は、ないか…』
LINEを開いても実弥さんからの通知はない。
トーク画面を親指でスライドさせて遡った。
《5番線に電車が参ります____》
寿美とのLINEを返して、電車に乗り込んだ。
あー、会いたいな
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パチ麻呂(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!近いうちに続編公開致します、もう少しお待ち頂ければ幸いです! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - とっても面白かったです。続きも楽しみです! (2020年7月4日 20時) (レス) id: 7a18dbf6fa (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!次の章まで時間が空いてしまうかもしれませんが、幸せな2人がかけるように準備頑張りますので、楽しみに待っていてください(;_;) (2020年7月2日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - 毎回更新楽しみにしています!!優しい実弥さんも夢主さんも絶対に幸せになってほしい(*´∀`*) (2020年7月2日 3時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ぽんちゃんさん» 夢主ちゃんの家庭ならありそうですけど、実弥さんはしっかり自立した成人男性ねさであり、きっと親からも信頼されているので、ないんじゃないかな!と解釈しております! (2020年6月27日 4時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
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