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『実弥さん、どうしたんですか?』






「…なんでもねェ」







突然抱きしめられた。


びっくりしたけど、



なんだろう、この懐かしい感じ。








「わりィ」






ゆっくり離れようとする実弥さん


嫌だ、この感覚を忘れたくない






『まって…離れないで』






恐る恐る実弥さんの背中に手を回せば、抱きしめられる力が更に強くなった。



少し苦しいけど、それが心地よい。

私の肩に顔を埋めて表情は見えない。



ふわふわした銀髪が頬を撫でた。







『…へへ、なんか懐かしいです』






実弥さんの首の匂いをこっそり嗅げば、安心感に包まれた。







今度こそ離れる体。


私たちの間を風が通り過ぎた。








「A」








掠れた声で名前を呼ばれた。


長いまつ毛は伏せられて、目が合わない。









『ぁ…』





熱を帯びた視線。




ゾクリと反応する体。







ゆっくりと近寄る顔。





パチッ

パチパチッ



(なにこれ…)



目の前が霞む、怖い。




刹那、知らない映像が頭に流れ込んでくる。




この景色は和室?
実弥さん?…違う、夢に出るあの人?

すごい幸せそう。

その人は私に手を伸ばして、熱を持った目で私を見る。
まるで、目の前の実弥さんと同じような。


あれ、この人、もしかして実弥さんなの…?


夢の中のあの人ってもしや…!















「…飯、作る」







『え………あ、はい!』



パッと離れた実弥さんはそそくさと家の中へ入っていった。


私も中へ入ろうとしたけど動けない。なんなら力が抜けていく。



『なにあれぇ…』



へたりとベランダに座り込んで脱力してしまう。
熱っぽい目をした実弥さん。


その実弥さんとそっくり、いや実弥さんとの知らない記憶。


もう頭の中がめちゃくちゃだ。
__
____
_______



「ハァァーーーーーーー」

肺の中にあるだけの空気をため息として吐き出した。


Aが俺を思い出すまでできる限り触れないようにしようと思っていた。

大切にしたいと思った。怖がらせたくなかった。



気持ちとは真逆の行動をする体。

抱きしめた時の柔らかいAの体。
鼻腔をくすぐる優しい香り。


「ッ…」


クラクラする。

頭を抱えてキッチンでしゃがみこむ。





あー、どうすりゃいいんだ。






Aのことになると自分が自分じゃなくなるような。




「…ハッ、だせぇな俺」




ここまで余裕がない人間だとは思いもしなかった。

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パチ麻呂(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!近いうちに続編公開致します、もう少しお待ち頂ければ幸いです! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - とっても面白かったです。続きも楽しみです! (2020年7月4日 20時) (レス) id: 7a18dbf6fa (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!次の章まで時間が空いてしまうかもしれませんが、幸せな2人がかけるように準備頑張りますので、楽しみに待っていてください(;_;) (2020年7月2日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - 毎回更新楽しみにしています!!優しい実弥さんも夢主さんも絶対に幸せになってほしい(*´∀`*) (2020年7月2日 3時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ぽんちゃんさん» 夢主ちゃんの家庭ならありそうですけど、実弥さんはしっかり自立した成人男性ねさであり、きっと親からも信頼されているので、ないんじゃないかな!と解釈しております! (2020年6月27日 4時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年6月3日 5時

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