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爆速で支度を済ませてマンションから飛び出すと、背後から呼び止められる声が聞こえた。
『実弥さん、お待たせしました!』
駆け寄ると、スーツ姿の実弥さんは優しく笑った。
「悪いな、こんな時間に」
『いえ、何かあったんですか?』
「あー、…ここじゃあれだ」
頭を掻きながら明後日の方を向くから、話しにくいことなのかと悟った。
『散歩しましょうか、近くに公園あります』
今日会うのが2度目なんて思えないくらい自然に言葉が出る。
別に特別人見知りなわけじゃなけど不思議と緊張しない。
だって考えてみてよ。ナンパから助けて貰ったくらいでこうやってもう一度会いたいとか思う?思わないでしょう?
自分でも信じられないくらい彼を信じきっているの。
こっちです、と先を歩く私の横を実弥さんは大人しく着いてきた。
今日はなにしてたか、とか寿美とは仲良くやってるかとか。本当に他愛ない話をして歩く。いつまでも話していたいな、なんて思うくらい安心出来る時間だった。
「…怖い夢、見ちゃいねぇか?」
『怖い夢?』
「見ねぇか?」
『怖い夢、というか前言ったみたいな知らない記憶がたまに』
「泣いちゃいねぇか?」
『へへ、どうしたんですか。泣いてないですよ?』
あまりにも親身になってくれるから笑って答えた。
「そうか。幸せならよかった」
『…幸せ、ですか、そうですね』
なんだか違和感を感じた。
確かに幸せかもしれない。高級な高層マンションに住んで、寿美みたいな友達がいて、宮里さんが大切にしてくれて。
でも、足りない。
何かが足りない。
『実弥さん、実弥さんにとっての幸せってなんですか?』
「…大切なやつを、幸せにすることが俺の幸せだ」
まるで私に言っているみたいに言葉を紡ぐ姿は、見覚えがあった。
チラリと寂しそうな笑顔でこっちを見られた瞬間
またフラッシュバックが。
どこかの古い病室。私はベッドに座っていた。
背丈も顔も実弥さんなのに、黒い制服と白い羽織、刀を腰にぶら下げた実弥さんの姿だ。
“二度と、俺の前から居なくならないでくれよ”
『あれ…へへ、おかしいな』
泣きたくないのに涙が出ちゃって焦る。
「ッ、おい、どうした」
慌てて視線を合わせるように屈んでくれる。実弥さんからはひどく懐かしい香りがした。
『わかんない…です』
すぐ側にあった公園のベンチに私を座らせ、目の前で実弥さんはしゃがんだ。
心配そうに私を見上げる実弥さんはどこまでも優しい。
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パチ麻呂(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!近いうちに続編公開致します、もう少しお待ち頂ければ幸いです! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - とっても面白かったです。続きも楽しみです! (2020年7月4日 20時) (レス) id: 7a18dbf6fa (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!次の章まで時間が空いてしまうかもしれませんが、幸せな2人がかけるように準備頑張りますので、楽しみに待っていてください(;_;) (2020年7月2日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - 毎回更新楽しみにしています!!優しい実弥さんも夢主さんも絶対に幸せになってほしい(*´∀`*) (2020年7月2日 3時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ぽんちゃんさん» 夢主ちゃんの家庭ならありそうですけど、実弥さんはしっかり自立した成人男性ねさであり、きっと親からも信頼されているので、ないんじゃないかな!と解釈しております! (2020年6月27日 4時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
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