獅 子 奮 迅 Another【不死川実弥】

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車のドアを開けると冷たい風が髪を揺らした。
びしょ濡れの私に気を使って車内は暖房を効かせてくれていたみたい。

スマートな人だなぁ。

『あの、何から何まで本当にありがとうございました』

「気にすんなァ」

車から降りて見送りに来てくれた実弥さん。



『タオル、洗って返したいので…また会えますか？』

勇気を振り絞って聞いてみた。タオルなんて寿美経由で返せるのに。ぎゅっと拳を握りしめて足元を見つめた。

「…寿美に渡しゃいいだろ」

『あ、会いたいんです！！！！』

突然大声で言った私に実弥さんは一瞬固まったけれど、すぐに柔らかく笑ってくれた。

「…あァ、連絡してくれェ」

その笑顔は優しくて、なにか大切なものを見るような目をしていた。

きゅ、と締め付けられた胸

「ほら、風邪ひくだろ、行け」

実弥さんは私の頬辺りに手を伸ばした。
とてつもなく優しい瞳で。

『えっと…なんかついてます？』

「いや、わりぃ、なんでもない」

すぐに手を引っ込めると冷静な顔に戻った。

『そうですか…それじゃ、おやすみなさい実弥さん』

「あァ、おやすみ」

何故だか実弥さんの切なそうな顔を見て泣きそうになった。

実弥さんも疲れてるはずだ、これ以上長居はさせられない。
マンションのエントランスへ走って向かった。



なんだろう、知らない。

この気持ちはなんだろう。


手には実弥さんから借りたタオル。


いけないことだとは思うけど、匂いをかいでみた。


『…うぅ、なんでぇ…』


理由は分からないけど涙がでた。

だれもいないエレベーターの壁にもたれて、ズルズルとしゃがみ込んだ。



『うっ、ひぐ…なんで、懐かしいの…！』



タオルを握りしめて、訳もわからず泣くしかできなかった。




心が暖かくなる香り。






今日はいろいろありすぎたよ。






不死川さん、不死川実弥さん。






あなたは、私が探していた人ですか？






私がずっと焦がれていたのはあなたなのですか？






あなたは私の何ですか？


私はあなたの何ですか？






聞きたいことが溢れて、





あの笑顔を思い浮かべる度に胸が痛くなった。






どうしよう、もう会いたい。









出会って間もないのに、あんなに優しい目で見てくれた。







もっと知りたい。




実弥さんを知りたい。








実弥さんに私を知って欲しい。









雨で湿った身体を小さくして、苦しくなった。

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