検索窓
今日:5 hit、昨日:20 hit、合計:230,744 hit

百七話 ページ8

程よく酔いが周り、眠る支度を済ませた俺たちは同じ布団にくるまる。


蚊取線香の匂いが鼻をかすめた。




『綺麗だなぁ…』



Aの手の中にはあの簪。

「そんなに気に入ったかァ」

『宝物だよ』

「にしてもずっと眺めてんなァ」

『うん。ほら見て。月に透かすとこんなに澄んだ青になるの』

俺の目の前に差し出すから、それを大人しく眺める。

「…Aみてぇだと思った」

『これ?』

「店で見つけた時。これを見てピンと来たもんだから思わず買っちまった」

『へへ、そっかぁ。私こんなに綺麗なんだ…』

へにゃり、と笑ったA。

眠たそうに目を擦ればゆっくり瞼を持ち上げた

『実弥と眠る時さ、いつももっとおはなししたいなって思うのに…眠くなっちゃうの』

俺の胸元に潜り込んで、モゴモゴと話し始めた。

『昔からずっと、この匂いが好きだなぁ』

すぅ、と俺の匂いを嗅がれる。
前からよくやる癖みたいなもんだった。

『きっと、生まれ変わっても見つけられるよ。匂いって忘れないじゃない?』

「俺は来世も前世も信じねェ」

『夢がないんだから。でも、もし生まれ変わった時に今日のこと忘れちゃっていたら嫌だなぁ』

「…仮に来世があるとしても、また会えんだろ」

『え?』

「そしたらまた花火大会、連れてく」

『ほんと?』

「あァ」

『来世も愛してくれる?』

「…あたりめぇだ」

『ふふ、らしくないね』

「お前が変なこと聞くからだろォ」

『へへ、なにそれ』

「いいから寝ろ、疲れたろ」

我ながら随分夢見がちなことを言っている気がする。
だいぶ恥ずかしくなってきたので会話を強制終了させた。

相変わらず俺の腕の中でニコニコしているA。

『ふふ、おやすみ。実弥』

「おやすみィ」

くぁ、とあくびをすると急に眠たくなってきた。


ぎゅ、と強くAを抱きしめ感触を確かめると直ぐに眠りに落ちた。

百八話→←百六話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (270 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
423人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。