百七話 ページ8
程よく酔いが周り、眠る支度を済ませた俺たちは同じ布団にくるまる。
蚊取線香の匂いが鼻をかすめた。
『綺麗だなぁ…』
Aの手の中にはあの簪。
「そんなに気に入ったかァ」
『宝物だよ』
「にしてもずっと眺めてんなァ」
『うん。ほら見て。月に透かすとこんなに澄んだ青になるの』
俺の目の前に差し出すから、それを大人しく眺める。
「…Aみてぇだと思った」
『これ?』
「店で見つけた時。これを見てピンと来たもんだから思わず買っちまった」
『へへ、そっかぁ。私こんなに綺麗なんだ…』
へにゃり、と笑ったA。
眠たそうに目を擦ればゆっくり瞼を持ち上げた
『実弥と眠る時さ、いつももっとおはなししたいなって思うのに…眠くなっちゃうの』
俺の胸元に潜り込んで、モゴモゴと話し始めた。
『昔からずっと、この匂いが好きだなぁ』
すぅ、と俺の匂いを嗅がれる。
前からよくやる癖みたいなもんだった。
『きっと、生まれ変わっても見つけられるよ。匂いって忘れないじゃない?』
「俺は来世も前世も信じねェ」
『夢がないんだから。でも、もし生まれ変わった時に今日のこと忘れちゃっていたら嫌だなぁ』
「…仮に来世があるとしても、また会えんだろ」
『え?』
「そしたらまた花火大会、連れてく」
『ほんと?』
「あァ」
『来世も愛してくれる?』
「…あたりめぇだ」
『ふふ、らしくないね』
「お前が変なこと聞くからだろォ」
『へへ、なにそれ』
「いいから寝ろ、疲れたろ」
我ながら随分夢見がちなことを言っている気がする。
だいぶ恥ずかしくなってきたので会話を強制終了させた。
相変わらず俺の腕の中でニコニコしているA。
『ふふ、おやすみ。実弥』
「おやすみィ」
くぁ、とあくびをすると急に眠たくなってきた。
ぎゅ、と強くAを抱きしめ感触を確かめると直ぐに眠りに落ちた。
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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
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