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百四十六話 ページ47




「A…?」

『実弥…』

ゆっくりと開いた瞳と目が合えば柔らかく細められた。

「今な、あの世でおふくろや、玄弥に会ったんだァ」

『ふふ、幸せな夢…だね』

私の髪を優しく撫でた。私の大好きな手。

訪れる死を前に、彼に伝えなければならないことがある。



『…ごめん、実弥ごめん、生きて…帰れない』


「……は?」


『祝言、あげるって言ったのに、貴方との約束…何一つ守れていない』

頬を伝う涙は暖かかい。

「おい、嘘だろ」


『抱きしめて…?』

言った通り黙って私を抱きしめた。
体は痛くて痛くてたまらないだろうに。

「やめろ、もう喋るんじゃねェ!」

『失わせてごめんね、そばに居るって約束したのに』

「あああやめろ!やめてくれ!」

『置いていってしまうの、許して欲しい』

私を抱える実弥の手はガタガタと震えていた。

「や…やめろ」

『ごめんね』

「なに死ぬみたいな言い方してんだ、死なせねぇ!」

『実弥。笑ってよ、怖い顔しないで…』

「ハハッ、は、おい、…嘘だろ」


『うん、そう。その顔が好き』



『ふふ、あなたの腕の中にいられるなんて。幸せ』


「…なぁ、A、俺といて、幸せだったか?」


震える声とぐしゃぐしゃになった泣き顔。ごめんね。


『心の底から幸せだった』


「そうかぃ、そう…っかァ」


実弥の涙がぽたぽたと顔に垂れるけど、その感覚はもう分からない


『実弥、来世で会おうね』


「何があってもお前を探し出す、見つけるから、…待っててくれるかァ」


『うん、待ってるから、だから、私達の分も生きて』


「ああ、生きる。生きるから、…あ、ああ」


実弥の笑顔をみて、ホッと胸を撫で下ろす。


『私の未来を貴方に託します…だから、笑って?』



「A…ッ」




『実弥、私と約束して』




「あァ」






『ご飯をしっかり食べて…よく寝て…お日様をいっぱいあびて…仲間を大切にして。貴方はとっても愛に溢れた、優しい人だから…』





「そうする、約束する」







『実弥、私からのお願いです』









『強く、生きて』





「ッ、…」





『愛してるよ、実弥』









「…ッああ、永遠に愛してる、A」









なんて穏やかな景色なんだろう。





優しく笑ったその顔をみて、





ゆっくりと瞼を閉じた。








「“またな”A」








最後に、







柔らかい口付けの感覚だけは感じた。









ありがとう、








愛してるよ、実弥。

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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

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