百四十四話 ページ45
『実弥…実弥は』
振り返れば気を失った実弥と、血を流す玄弥
『ッ、玄弥ぁ！』
慌てて立ち上がれば腹の傷が傷んだ。
それでも這うように玄弥のもとへ急いだ。
『ああ、嘘でしょ、まって、嫌だ…！実弥起きて！玄弥が…玄弥が！
実弥、あなた言わなくちゃいけないことがたくさんあるでしょう？！』
怪我なんてお構い無しに泣き叫んで、横で眠る実弥の体を揺する。
「Aさん」
それも虚しくボロリと身体が崩れ始めた。
『ッなに、なに玄弥、どうしたらいい？！どうしたら止まるの？！』
「Aさん、聞いてくれ、お願いがある」
『なに、玄弥…！』
「兄貴のこと、よろしく…お願いします」
『あああ、もちろん、もちろんだよ！でも、玄弥はその将来にいなきゃ…！』
「兄貴の、あんなに幸せそうな顔、…初めて見たんです」
『…なに言ってるの…』
「ああ、兄ちゃんとAさんの、祝言。見たかったなァ」
『見れるよ、見れるから…生きてよ…！』
「Aさん、いや…」
「“姉さん”」
『ッ！』
「幸せに、…なってね…」
『…うん！うん！！なるよっ！ぅああ…！』
私の泣き声に反応したのか、実弥は目を覚ました。
「A…、！！！」
横にいる玄弥を見た瞬間、その目を開いた。
「どうなってる畜生！体が…！」
泣き叫ぶ実弥の声を聞いて、どうすることも出来ない。
「大丈夫だ、何とかしてやる、兄ちゃんがどうにかしてやる！」
『玄弥ぁ…！』
「兄ちゃん…ごめん…あの時兄ちゃんを責めて、ごめん、迷惑ばっかり…かけてごめん」
「迷惑なんかひとつもかけてねェ！死ぬな！俺より先に死ぬんじゃねェ！」
嗚呼、神様。
この兄弟が乗り越えるべき壁はあまりにも大きすぎませんか？
「俺の兄ちゃんは、この世で1番優しいひとだから…」
「あﾞあﾞあﾞ頼む神様、どうかどうか…弟を連れて行かないでくれお願いだ！！｣
「あり…がとう、Aさん、兄ちゃん…」
『あ…あ、っげん、や』
「ああああああ玄弥！ああ、うああああ！玄弥ァ！！！」
胸が引き裂かれるような
筆舌に尽くし難い、この気持ちは私の持つ語彙力じゃ表せない。
吐きそうな程の絶望
神や仏なんかに祈ったってだれも帰ってこない。
そんなこと誰よりも知っているのは私たちなのに。
それなのに神に祈るほど打ちひしがれてる実弥がどれだけ玄弥を愛していたか。
最愛の弟を失っても行かなくてはいけない。
無惨を倒すまで止まることは許されない。
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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです！続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです！ (2020年11月8日 16時) (
レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様！とりあえずお疲れ様でございました！もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます！これからも応援してます！ (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます！性癖っていうんですかｗ続編も見させて頂いてます！これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、！こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します！ (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました（ＴＴ）ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
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