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百四十一話 ページ42

_不死川玄弥_


もうダメだと思った。


鬼化が進みきっていない俺の身体を上弦の壱に両断された。


時透さんは動けない。
這え、腕を繋げろ…急げ!!!





刹那





「昇上砂塵嵐」

『禅狩千撃』


爆風と、獅子の唸り声、

幻聴じゃないかと耳を疑った。


立ち込める煙が消えなくてもわかる。
目の前に庇うように立ちはだかるのは、鬼殺隊最強の組み合わせ。

風柱、獅子柱。



黒死牟『風の柱と、獅子の柱か…』

「その通りだぜ。テメェの頸を捻じ切る風だァ」

『逃がすと思うなよ』


玄弥「兄貴…、Aさん…!」



「テメェは本当に、どうしようもねェ弟だぜ」

弟…?

「なんの為に俺が母親を殺してまでお前を守ったと思ってやがる」

玄弥「ッ、」

『“私達”の弟に、随分と酷いことしてくれたじゃない』

穏やかに笑うあのAさんの目は今までに見たことないほど怒りに満ちている。
大きな瞳は更に見開かれ、今にも獲物を食い殺そうとする獅子のようだった。

醸し出す覇気は味方なのに恐怖さえも覚えた。
その細い喉から猛獣が唸るような低い音がする。

『実弥、先に行く』

「あァ」

ドスの効いた低い声で言うと、目にも止まらぬ速さで上弦の壱に斬りかかった。

「オイ」

Aさんの目にも止まらない戦いに目を奪われていると、兄貴が声をかけた。

「テメェはどっかで所帯持って家族増やして爺になるまで生きてりゃあ良かったんだよ」

ずっと聞きたかった兄貴の声。
焦がれていたその声、痛いほど伝わるその愛情と優しさ。

堪えきれない涙が頬を伝った。

「お袋にしてやれなかった分も弟や妹にしてやれなかった分も、お前がお前の女房や子供を幸せにすりゃあ良かっただろうが

…そこには絶対に俺が鬼なんか来させねぇから…」

玄弥「ごめん兄ちゃん…ッごめん」

くしゃりと俺の頭を撫でた兄ちゃん。刀は怒りで震えていた。

「よくも俺の弟を刻みやがったなァ糞目玉野郎ォオ!」

その顔は血管が浮き出るほど怒りに満ちていた。

「許さねェ許さねェ許さねェェ!!!!」


Aさんと戦う上弦の壱に加戦した。

さすがは鬼殺隊最強階級の柱だ、目で追うことも難しい。

『攻撃が不規則な上に速いッ』

「殺し甲斐があんなァ」

『フッ、そうだね』

また更に速さを増し、攻撃を捌ききる2人は一瞬の乱れも許さない。
何年もかけて培った経験と幾度にも及ぶ手合せから得た誰にも越えられない連携技。




不覚にも、美しいとさえ思えた。

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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

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