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百三十八話 ページ39




布団に横になれば稽古中に負った怪我が思い出したかのようにジワジワと痛む。
寝れば治るのは分かっているけど、痛いものは痛い。


明かりも消えて静かになった実弥の家の寝室。
そこはもう見慣れていて、時の流れを感じた。


『…他の柱も痣が出て、こうやって柱稽古してさ。鬼舞辻無惨との最終決戦も近づいているんだよね…』

横で寝ている実弥のてのひらをぎゅっと握った。

「そうだなァ」

『私達の代で倒せるかな』

自信が無い訳ではない。倒すつもりで今までやってきた。

「A」

ころりとこちらに寝返りをうって真剣な眼差しを向けられた。

「怖いか」

『まさか。家族の仇だもの。必ず終わらせてみせる』

「フッ、さすが俺の女だ」

『でもね。大切な仲間が居なくなってしまうかもしれないって考えると、少し怖いな』

「そういう宿命だ、としか言えねェが、俺は絶対に死なねェ」

腰を引かれて、あっという間に実弥の胸の中に収まった。

「死なねェから、お前も絶対に死ぬな。約束しろ」

『うん、約束するよ』


うっすら閉じられた瞳が近づいて、優しい口付けを受け入れた。


この優しい瞳をずっと見ていたいから、ずっとこうやって横にいたいから、私は死ぬつもりはない。

けれど。



もし、


もしも、


私が犠牲になっても、


実弥にはずっと、その優しい瞳を失わないで欲しい。





痣の出現から死ぬ覚悟なんてとっくに出来ている。



出来ていたはずだったけど。
脆いなぁ、自分は。







実弥を失ったら。なんて考えたら怖くて仕方ないの。






鬼のいない平和な世界で貴方と出会えたら、





どんなに幸せだったのだろう。








じわりと浮かんだ涙を悟られまいと、布団を頭まで被った。



乱れた呼吸を必死に整えて、声を噛み締めて涙を流した。









「…A。頼むから1人で泣くなァ」







嗚呼、なんて優しいの。








『っごめん…』





泣いている私を見つけるのが上手だね。





『やっぱり、実弥、怖い。居なくならないで』







「俺だって怖ェ。お前を失ったらって考えたら」







『っ、』








「だから、1人で泣くな。俺はここにいる」



『うん、分かってる』





『実弥?』




「どうしたァ」






『絶対生き残ろう。何があっても』







「当たり前だァ」







大好きな香りにめいっぱい包まれた。









その次の日、産屋敷邸襲撃。



鬼舞辻無惨との最終決戦が始まったのだった。

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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

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