百二十八話 ページ29
『姉様…?』
鬼「姉様は俺とは比べ物にならないほど強い。必ずお前らを捕まえる」
「待てよ!おい、俺の兄貴は…!お前が喰ったのかよ!?」
鬼「さぁな、喰いすぎて覚えちゃいねぇ」
「ふざけんな!ふざけんな!!」
鬼に飛びかかろうとする留吉さんを制する。
『危ない、下がって留吉さん』
「うるせぇ!コイツ、殺してやる!!殺してやる!!!」
鬼「その顔…見覚えがあるな。嗚呼、今夜の姉様のお食事になる男か…」
「お食事…だと…?」
ピタリと止まり、振り上げていた拳をだらんと降ろした
「兄貴…生きてるのか…?」
鬼「さあな、今頃姉様に喰われてるかもしれない。諦めろ小僧」
「どこだよ!!!どこに兄貴が!!!」
鬼「ムダだ、あの館へ行ったところでどうせお前らも喰われる」
どうせ口を割らない。お兄さんが生きているのだとすれば時間が惜しい。
『ご忠告どうもね、もう言い残すことはない?』
鬼「姉様に喰われて死ね」
『…くだらない遺言』
日輪刀を振り下ろせば呆気なく塵となった鬼。
ブルブルと震えながら涙を流す留吉さん。
絶望と怒りに満ちたその顔はかつての自分を見ているような気持ちになった。
「Aさん頼む…兄貴を助けに俺も行かせてくれ」
『だめです、危なすぎる』
「なんでだよ!!俺は弟だ!!兄貴の!たった1人の弟なんだよ!!」
威勢よく掴みかかってきたその力はお世辞にも強いとは言えなかった。
そんな力で鬼と渡りあう気なのだろうか。
『…私が必ずお兄さんを取り戻すから。留吉さんは宿に戻って。さっきの鬼の攻撃で騒ぎになってるはずだから』
「…嫌だ!」
『留吉さん!!』
大きな声を出せばビクリと震えた。
『…お願い…私を信じて…』
じっと私の顔を見つめると、悔しそうに俯いた。
「…っ、頼みます、たった1人の兄貴なんだ…!」
『留吉さん。この子がきっとあなたを守ります』
片手をあげると鴉がとまった。
『いい子』
「さっきの鴉…?」
『この子は鬼を寄せない特別な香りの子なの。きっと大丈夫です』
「…わかった」
大粒の涙を流す留吉さんの肩を撫でて、私は鬼の言う“館”を探しに夜の空へ飛び出した。
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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
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