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百十一話 ページ12

『っきりがない!』

切っても切っても生える触手に苛立ってきた。見た目も虫みたいで気色が悪い。
さらに厄介なことに血鬼術もつかう。
生えてくる触手が刃のような切れ味をもつもので、何度か切りつけられてしまった。

『全集中、獅子の呼吸____伍の型』

“隆々叫獣の裂き”

だめだ。触手がしつこい、何度か頸を狙っても触手に阻まれる。
息が切れ始めていた。玄弥も攻撃を避けながら走り回って、時には反撃にでている。限界が近い。

『…ちょっと、しつこいんじゃない、お前』

鬼をギロリと睨むと、身体の底からなにかが込み上げるような感覚に陥った。


ズズ…、と低い音のような、感覚なのか。

身体が熱を持った。まるで上弦と戦ったあの時のような。


『獅子の呼吸__肆の型』

“ �朋猊”



筋肉が軋む音。
自分が出せる最高速度。

地面スレスレの低い姿勢から、鬼の体を真っ二つに切り上げる。

吹き飛ぶ頸。



汚い断末魔。


『はっ、はっ…』

「Aさん、大丈夫ですか?」

玄弥が駆け寄ってきた。傷だらけになって、可哀想に。

『はぁ、平気。ちょっと呼吸が乱れただけ。玄弥は?』

「俺は大丈夫です、Aさん、血が…」

額からポタリと垂れた血。触れば痛む、返り血ではないようだ。

『いたい…』

深く深呼吸をして息を整え、傷口付近の血管を意識して止血をする。

「ああ、止血しなきゃ」

オロオロと手ぬぐいを懐から取り出す玄弥

『大丈夫、呼吸で止血してるから』

「じゃあ、拭きましょう」

大きな掌で私の頬を包めば、逆の手で優しく血をぬぐった。
その顔は実弥と瓜二つ。つい癖でその手に擦り寄ってしまった。

「えっ、あ、Aサン…っ?」

暗くても分かる。ゆでダコのように真っ赤になった玄弥をみて、しまった、と思った。

『ご、ごめん、癖で…』

「いや、俺こそ勝手に触って、その、…スミマセン」

『…似てるね、あなたたち』

「え?」

『実弥と重ねちゃった』

「俺、似てますか。良かったです」

少し嬉しそうに笑った玄弥。

「あ、隠が来ましたよ。頭、治療してもらいましょう」

『玄弥もそのほっぺたどうにかしてもらいな!』

泥だらけになった頬をつつけばまた真っ赤になった。

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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

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