知 ら な い フ リ ３ 【不死川実弥】

佐伯くん ページ9

冷え込むある朝。

今日みたいな日は女子高生の生足にはキツイ。
本当はスカートの下にジャージ履きたいんだけど昔実弥に土下座する勢いで「頼むからその格好だけはダサすぎるから辞めてくれ」ってお願いされたっけな。


なんて物思いにふけながらいつもの通学路をダラダラ歩いていると



「Aちゃん、おはよう」

『佐伯くん、おはよー。この前はカイロありがとね』



２大イケメンの1人、佐伯くんが後ろから駆け寄ってきた。



「いいよいいよ、今日も寒いね」

『足が凍え死にそう』

「女の子は大変そうだね」



そう言ってちらりと私の足に目を向けた途端、顔を赤くして「あ、ゴメン」と小さく呟いた。


なんだかウブな反応が新鮮で思わず吹き出してしまった。


『ふふ、ピュアだね』

「…そりゃあ、Aちゃんみたいに恋人とかいねぇし…」

『でもモテるじゃん』

「…そうでもないし…本当にモテたい子にはモテないよ」

『へぇ、２大イケメン様にもお悩みがあるようで』

「お、俺よりAちゃんの話を聞かせてよ」

『私の話…？』

「不死川と、どうなの」

『……距離、おいてる』

「っ、どうして？」

『…バスケ頑張りたいんだって。私も実弥に甘えきった生活辞めたいしちょうどいいの』

「それを両立するのが彼氏の役目だろ！Aちゃんにそんな寂しそうな顔させるなよ！」

『ちょ、佐伯くん…声デカい…』


学校に近づくにつれて増える生徒たち。
佐伯くんの声に反応してみんなこっちを見てる。


「ご、ゴメン…」


見るからにしょんぼりする佐伯くん。


実弥みたいに男らしい感じはしないし
宇隨くんみたいなチャラさとかもなければ
妓夫太郎センパイみたいな面倒見の良さもない


知り合いの男の子の中でも新種のタイプだから扱いにくい。



はは、と苦笑いするしかない。



『…あれ』


そんな私たちをやけに見つめてくる1人の女の子と目が合った。



『…あの子…確か男バスの…』


男子バスケ部マネージャー。


「あ、金谷だ」


噂によると最近実弥の練習に付き添ったり部活後に一緒にいるとかって聞いたな…。



なんだか睨むような目付きで見られるから思わず狼狽えてしまう。


本当は彼氏の周りをうろつく女なんて睨み返してやりたいけど余計なトラブルを避けたいし

…今の私は実弥の彼女だって胸を張れるほどの女の子ではない気がするから



そう思ってしまったが最後。

佐伯くんがいるのに沈んだ顔を浮かべてしまった。

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