知 ら な い フ リ ３ 【不死川実弥】

． ページ44

．



“愛してる”




なんて人はたまに言うけれど、それってなんなんだろう。




愛って、なんだろう。




目に見えないし、形がないから触れない。

色も、大きさも、重さも分からないの。




だから、ずっと分からなかった。

ドラマや漫画で語る人達は、それをなんだと思って

いつ、どこで、どんな気持ちで口にするのだろう。





なんとなく分からなくて、何となく理解した気になっていたいままで。




あの日、好きだと言われて向き合った、ひとつの愛。





そんな私にも1つ分かったことがあって。



「A、おいで」



こうやって優しく微笑むあなたは間違いなく


私の“愛”なのだと思う。





私のために

怒って

泣いて

笑って


これを愛と呼ばずになんと呼ぶんだろうね。




あなたその物が私の愛で、存在を愛しているの。





時に冷たいこの世界で、絶対的な味方がいること

この広い世界であなたと巡り会えた。



たまたま隣の家に生まれて、


たまたま一緒に育って、


たまたま恋に落ちた。



たったそれだけのことに

数え切れない程の奇跡が詰まっていて。





モテるアイツには選択肢なんて山ほどあったはずなのに

マイペースに生きる私の歩幅に合わせてずっと歩いてくれた。


家族とも友達とも違う、大切な人。







何度伝えても足りないくらい


愛していて


あなたに感謝している。





『実弥、だいすき』




「俺もォ」





分厚い胸板に頬を擦り寄せると、大きな手のひらが髪を撫でる。





この手に守られて、愛されて。






「さねちゃーん、Aー、時間よー」


「はいよォ」

『はぁい』



桜が舞う今日、この街を出る。



怖くなんてない、寂しくなんてない。


大丈夫。



「じゃ、行くかァ」

『うん』

「…ありがとな、着いてきてくれて」

『きっと楽しいことしかないよ。アンタとならなんでも楽しい』

「同感だ」








私の“愛”。




あなたをずっと想ってきた。



これからも想い続けていく。




それが私の“愛”。





だから、この街を離れてもやっていけると思うんだ。



2人なら、もっとずっと幸せになれる。






なんて本人には絶対言ってあげないんだ。
















私の知らないフリから始まったこの恋。



たくさん泣いて、たくさん怒って、その倍笑ってた。


もう大丈夫、知らないフリなんかしないよ。




『これからもよろしくね、相棒！』

「任せろ、相棒」




fin

み ら い の ふ た り→←この部屋で

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す