この部屋で ページ43
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見慣れた俺の部屋の窓から、桜が舞い込むのが見えた。
卒業式の時はまだ蕾が膨らんでいた程度だったと言うのに。
___いつかの記憶に浸ろうと目を閉じた。
『ねー、先週のジャンプどこー?』
「オイ、勝手にベッド乗ってんじゃねェ」
『床だとお尻痛くなるもん嫌だ』
「…ったくよォ」
「Aテメェ遅刻すんぞ」
『…あと5分…ぅ』
「マジで置いてくからな」
『やだぁ………グゥ…グゥ…』
「は、2度寝ェ…?…ありえねェ…」
『お母さんのおはぎ持ってきたぞーい』
「ノックしろっつってんだろォ!」
『ププ、そんなにキレてるとハゲるよ』
「……コロス」
___なんてアイツと言い合っていたこの部屋ともお別れで。
からっぽになった空間を見渡していれば、後ろから抱きしめられる感触。
『…ねぇ、寂しい?』
「…んー、ちょっとなァ」
軽く振り向けば、さっきまで頭を占領していたAが俺を見上げる。
『私も。思い出全部詰まってるもんね』
「ほんと、苦労したわァ」
『…なんの話?』
「鈍感能天気のお前VS思春期の俺」
『なぁに、まだ思春期でしょ実弥は』
「っんとにお前…最近はしおらしくなってきたと思ってたのによォ…」
『ププ、そんなにキレてるとハゲるよ?』
「ッ……は、そうだなァ…」
今日、俺たちは遠い街へ引っ越す。
無事志望校に2人とも合格し、同じ大学へ進学を決めたのはほんの少し前のこと。
俺達が育ったこの街を離れて、これから2人で暮らす為に。
生まれ育った街と、愛する家族や友達を置いていくのは勇気のいる決断だっただろう。
それを彼女は、快く受け入れた。
「…A」
『んー?』
「ホントに、いいんだな?」
『何回聞くの?いいの。私の1番は実弥なんだから』
「…そうかィ」
『そうです』
その顔に
迷いの色なんて1ミリもなくて。
むしろこの先の俺たちの道を楽しそうに見据えているようで。
『楽しみだね』
何年も見続けたこの笑顔を見ると
未だに愛しさで胸が苦しくなる。
それと同時に
根拠の無い力が湧いてくる。
辛い時、苦しい時
この笑顔を思い出すだけでどれだけ力が出るか。
今までたくさん救われた。
これからもそうなんだろう。
きっと、どこにいってもお前は俺の一番で
それは一生覆ることはないんだろうな。
「A、おいで」
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『…うんっ!』
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パチ麻呂(プロフ) - ナオピーさん» 読み返し…ありがとうございます🥺🥺このお話は高校生の2人、をメインにしたかったので未来の2人はこういったオマケの形で残させていただきました。また暇を持て余した時に読み返しに来てくださいね! (2021年12月6日 23時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
ナオピー(プロフ) - パチ麻呂さん、お疲れ様です。もう終わってしまって寂しさに何度も読み返していたところに、プロポーズ編がー!かけがえのない人生のパートナーとして幸せに過ごしてほしい二人です。素敵なお話を本当にありがとうございました! (2021年12月4日 16時) (レス) @page45 id: b5b3320d19 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 澪凪さん» 澪凪さん、最後まで読んでいただきありがとうございました🙇♀️ドキドキとキュンとは無関係な生活の私ですが、こうやって誰かに届けられたということが本当に嬉しいのです。次回作でもお会いしたいので是非待っていてくださいね🥰 (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ほりでぃすくさん» ほりでぃすくさん、ありがとうございました😿ハラハラ要素多くしすぎたかな、、って不安でしたが読み応えがあると言っていただけたなら救われます。嬉しいです。この作品を見つけていただき、ありがとうございました。また機会がございましたら是非!! (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - えむえむさん» えむえむさん、、ありがとうごいまざいます🥺遅い更新で読みにくい部分もあったかもしれません、それもでこの作品を見捨てないで頂けただけで嬉しいです。また次回作で新たなキュンキュンをお届けできるように妄想捗らせておきますね〜!! (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
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