私の名前を ページ31
ミーティングや片付けを終わらせ、会場を飛び出した。
ザワつく広場、一際目立つ宇髄を目印にそこ目掛けて走った。
「A!!」
『あ…』
大勢の人のなか、バッチリ交わった瞳。
ひどく懐かしい。
近寄ってももう逃げられることは無い。
宇髄と謝花兄妹は「ごゆっくり」と察したように立ち去った。
ザワザワと同じ高校の生徒たちが俺たちを見ている。
どうせ俺らが別れてると思って注目してんだろ。
知るかよそんなん。息を切らして真正面からAに向き合う。
「…勝てた。全国行く。お前のおかげだァ」
『うん。見てた』
どうにか目を見て謝りたくてあーとかえーとか言葉を選んでいるうちに流れる沈黙。
クソ、もう不安にさせたくねぇのに…!
そんななか先に口を開いたのはAだった。
『…ちゃんと、見てたよ。全部見てた』
「は」
『朝、誰よりも早く起きて練習してるの。放課後誰よりも残って練習してるのも、夜は遅くまで部屋の明かりが消えなかった。勉強もちゃんとしてたんでしょ』
風が吹いた。
髪を抑えて、俯いて、長いまつ毛を伏せた。
『真っ直ぐ応援できなくて…ゴメンね』
切なげな瞳に射抜かれた瞬間、体に電流が走ったような感覚。
俺は一体なにを言わせているんだ。
「っ違う!!謝るのは俺だ…!」
肩を掴んで叫ぶように言った。
「ずっと1人きりで寂しい思いさせて独りよがりで傷つけて…結局泣かせて…。そんで自己嫌悪で…捨てていいなんて言ったけどよォ」
言ってて不甲斐なくて仕方がない。
奥歯を噛み締めた。
「訂正させてくれ」
すぅ、と息を吸って不安そうな瞳を見つめる。
「俺の彼女でいて欲しい。朝は起こしてやりたいし登下校も一緒じゃねェと心配だ。俺の部屋で漫画勝手に読んでいて欲しいし、MUZANの話をダラダラして欲しい。…もう、距離置くなんてバカなことは言わねェ。ずっとそばに居る。離れない」
俺の言葉を最後まで聞いたAは強ばっていた顔をふと緩めた。
「まだ、俺のことを好きなら…この手をとってくれ」
1歩離れて、右手を差し出した。
断られるかもしれない。
いや、断られても仕方ない。
でも…可能性を捨てたくなかった。
惨めでもいいから縋り付きたかった。
また、風が吹いた。
『…私も。実弥がいなきゃダメだったよ。頑張っても苦しいだけだった』
「っ、それじゃあ…」
『彼女でいてあげる』
俺の右手は、Aの手に包まれた。
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パチ麻呂(プロフ) - ナオピーさん» 読み返し…ありがとうございます🥺🥺このお話は高校生の2人、をメインにしたかったので未来の2人はこういったオマケの形で残させていただきました。また暇を持て余した時に読み返しに来てくださいね! (2021年12月6日 23時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
ナオピー(プロフ) - パチ麻呂さん、お疲れ様です。もう終わってしまって寂しさに何度も読み返していたところに、プロポーズ編がー!かけがえのない人生のパートナーとして幸せに過ごしてほしい二人です。素敵なお話を本当にありがとうございました! (2021年12月4日 16時) (レス) @page45 id: b5b3320d19 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 澪凪さん» 澪凪さん、最後まで読んでいただきありがとうございました🙇♀️ドキドキとキュンとは無関係な生活の私ですが、こうやって誰かに届けられたということが本当に嬉しいのです。次回作でもお会いしたいので是非待っていてくださいね🥰 (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ほりでぃすくさん» ほりでぃすくさん、ありがとうございました😿ハラハラ要素多くしすぎたかな、、って不安でしたが読み応えがあると言っていただけたなら救われます。嬉しいです。この作品を見つけていただき、ありがとうございました。また機会がございましたら是非!! (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - えむえむさん» えむえむさん、、ありがとうごいまざいます🥺遅い更新で読みにくい部分もあったかもしれません、それもでこの作品を見捨てないで頂けただけで嬉しいです。また次回作で新たなキュンキュンをお届けできるように妄想捗らせておきますね〜!! (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
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