お願い ページ29
「ったくよー!お前がいつまでもチンタラしてっから始まっちゃってるだろ!」
『そ、そんな言い方しなくても…!』
渋滞に巻き込まれ、予定より随分と遅れた到着。
会場までドタバタ走って向かう。
近付けば近付く程大きくなる歓声。
直前になって足がすくんだ。
もし勝てなかったら?
私たちの今までの時間はなんだったのだろう。
本当に、ホントのホントに意味がなくなってしまう。
____もし勝てなかったら?
私は彼を許すことができないかもしれない。
一生この恋を悲しい思い出にしてしまう。
_____もし勝「だーいじょぶだって。アイツ勝つから」
『ッ!』
私の不安を察したのか、強ばる肩に手を置いてそう言った。
「…アイツなりに頑張ってきたからさ、見てやってよ」
『……ん』
重たい扉をぐ、と引くと
眩しい照明と、白熱する観客。
各校の応援団の声がビリビリと響く。
「こっち」と手招きされて座らされたのは最前の応援席。顔見知りの他に、遠くで実弥のお母さんや、玄弥を見つけた。
祈るように試合を見守る2人を見て胸が痛くなった。
純粋に実弥を応援できない自分が恥ずかしく思えたから。
「A!来たのね」
「間に合ったかぁ」
『梅、妓夫太郎センパイ!』
隣には謝花兄妹がいた。
梅には心配したような顔をされたけれど、今はそれどころではない。
「オイ、派手に押されてんな。状況は」
「不死川が本調子出てないっぽいぞぉ」
『そんな…』
私のせいだ…。
「私のせいだ、とか思ってんならそんな地味な考え今すぐ捨てろ。ちゃんと見てやれ。大丈夫だから」
何度も繰り返す、大丈夫という言葉。
貰ったお守りをカバンから取り出して握りしめる。
お願い、神様。
彼の努力を否定しないで。あと少しだから。
握りしめた拳が痛くて
そうでもしていないと耐えられなくて
怖くて目を逸らしたい、でも目に焼き付けたい。
淡々と過ぎる時間。
変わらない試合状況。
怖くて仕方がないの。
口元が震えて大粒の涙が溢れる。
それでも目を逸らしたくないから、拭うこともせずにただ試合をみつめた。
思うように試合ができない実弥が辛そうで、
『まっ…、負けるなぁ!!』
思わず、そう叫んでいた。
一瞬、交わった気がする視線。
走れ
負けるな
諦めないで
『勝って、勝って…!』
あと3点。
あと1分。
お願い
お願い
___実弥、お願い。
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パチ麻呂(プロフ) - ナオピーさん» 読み返し…ありがとうございます🥺🥺このお話は高校生の2人、をメインにしたかったので未来の2人はこういったオマケの形で残させていただきました。また暇を持て余した時に読み返しに来てくださいね! (2021年12月6日 23時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
ナオピー(プロフ) - パチ麻呂さん、お疲れ様です。もう終わってしまって寂しさに何度も読み返していたところに、プロポーズ編がー!かけがえのない人生のパートナーとして幸せに過ごしてほしい二人です。素敵なお話を本当にありがとうございました! (2021年12月4日 16時) (レス) @page45 id: b5b3320d19 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 澪凪さん» 澪凪さん、最後まで読んでいただきありがとうございました🙇♀️ドキドキとキュンとは無関係な生活の私ですが、こうやって誰かに届けられたということが本当に嬉しいのです。次回作でもお会いしたいので是非待っていてくださいね🥰 (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ほりでぃすくさん» ほりでぃすくさん、ありがとうございました😿ハラハラ要素多くしすぎたかな、、って不安でしたが読み応えがあると言っていただけたなら救われます。嬉しいです。この作品を見つけていただき、ありがとうございました。また機会がございましたら是非!! (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - えむえむさん» えむえむさん、、ありがとうごいまざいます🥺遅い更新で読みにくい部分もあったかもしれません、それもでこの作品を見捨てないで頂けただけで嬉しいです。また次回作で新たなキュンキュンをお届けできるように妄想捗らせておきますね〜!! (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
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