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誰もいない校舎裏。
どこかの窓から漏れる生徒たちの笑い声。
それが余計今の私を惨めにする。
ぐしゃぐしゃの泣き顔の私と、息を切らして困ったように笑う佐伯くん。
「はぁ、よかった、追いついた」
『え…』
「さっき廊下ですごく辛そうな顔して走ってたから、なにかあったのかなって。声掛けても聞こえてなかったし」
『…ごめん』
「謝らないでよ。…なにかあった?」
泣きたくなるくらい優しい声で私の前にしゃがみこんだ。
『……』
「言いたくないこと、あるよね。ゴメン」
フワリと肩にかけられたのは佐伯くんのブレザー。
『…ありがと』
「ん」
黙って私の横に腰を下ろして、落ち着くのを待ってくれた。
ようやく涙が止まった頃には、授業開始のチャイムなんてとっくに鳴っていて風の音だけが聞こえていた。
『サボらせてゴメン』
「この時間数学だったからさ。俺苦手だしサボれてラッキーだわ」
わざとかな。いつもより明るい声色でそう言った彼は元気よくはにかんだ。
『ふふ…優しいね』
その優しさが辛かったと同時に、誰かに寄りかからないとやっていけない自分の脆さが浮き彫りになった。
『私ね、実弥と何回も喧嘩したことあるの』
「幼なじみだもんね」
『その度に仲直り出来てた。だって実弥が私を嫌いになるわけないし、私も実弥を嫌いになるわけないから』
「うん」
『…ちゃんと仲直りできるって…いつもなら思うのに…今回は思えないの』
またグズグズと泣き出す私の背中をポンポンと撫でてくれる。
『こんなに距離が空くのは初めてだから、実弥が何考えてるか分からない、信じることが出来ないの。自分で選んだ環境なのに』
「Aちゃん…」
『……もう別れるしかないのかなぁ…』
最悪の未来が頭をよぎって、不安を口に出した。
「これは俺のひとりごとなんだけど」
『…?』
「もし、不死川がAちゃんを泣かせているなら…俺はアイツを殴りたいくらいムカつくよ」
『え』
「好きな子、泣かすやつは許せないよ」
鼻水ダラダラ涙ぐしょぐしょなのにその言葉にびっくりして顔をあげた。
真剣な目と交わる視線。
『…あ…あぅ…』
真っ白になる頭。
『わた、わたし…』
言葉を選んでしどろもどろしていれば
「いい、大丈夫」
と遮る佐伯くん。
「ひとりごとだからさ!」
『うぐぅ』
動物みたいな情けない泣き声も笑ってくれた。
優しいなぁ。
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パチ麻呂(プロフ) - ナオピーさん» 読み返し…ありがとうございます🥺🥺このお話は高校生の2人、をメインにしたかったので未来の2人はこういったオマケの形で残させていただきました。また暇を持て余した時に読み返しに来てくださいね! (2021年12月6日 23時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
ナオピー(プロフ) - パチ麻呂さん、お疲れ様です。もう終わってしまって寂しさに何度も読み返していたところに、プロポーズ編がー!かけがえのない人生のパートナーとして幸せに過ごしてほしい二人です。素敵なお話を本当にありがとうございました! (2021年12月4日 16時) (レス) @page45 id: b5b3320d19 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - 澪凪さん» 澪凪さん、最後まで読んでいただきありがとうございました🙇♀️ドキドキとキュンとは無関係な生活の私ですが、こうやって誰かに届けられたということが本当に嬉しいのです。次回作でもお会いしたいので是非待っていてくださいね🥰 (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - ほりでぃすくさん» ほりでぃすくさん、ありがとうございました😿ハラハラ要素多くしすぎたかな、、って不安でしたが読み応えがあると言っていただけたなら救われます。嬉しいです。この作品を見つけていただき、ありがとうございました。また機会がございましたら是非!! (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - えむえむさん» えむえむさん、、ありがとうごいまざいます🥺遅い更新で読みにくい部分もあったかもしれません、それもでこの作品を見捨てないで頂けただけで嬉しいです。また次回作で新たなキュンキュンをお届けできるように妄想捗らせておきますね〜!! (2021年12月3日 22時) (レス) id: 37af621f88 (このIDを非表示/違反報告)
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