和の旅立ち ページ31
智side
『和に会いたい』…『忘れている何かを思い出したい』と涙を流した翔…
そんな翔の背中を…俺は撫でてやる事しかできなくて…
お前が忘れてる事は…和への思いなんだと…
つい口をついてしまいそうになる…
でもね…
その思いは…翔………お前が…お前自身が思い出さなければ意味がないんだよ…
人に言われて納得できる気持ちじゃないから…
男の翔が…男の和に惚れてるなんて…
男女の恋愛とは違うからさ…他人が入り込めない領域…
智『和が、アメリカに行く前に…翔に会うように言っておく…面会に必ず行かせるからさ…』
こんなありきたりな言葉しか…かけてやれない
不甲斐ない兄貴でごめんな……
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翔に和の留学の話をしてから数日経った
５月も下旬
事務所の手伝いは一段落ついた様子の和
ここ数日は自分の留学の準備でバタバタしてる
留学が決まってすぐに、パスポートの申請をしていたらしく
昨日パスポートを受け取りに行ってたみたい
元々、モノの少ない和の部屋
留学準備と共に和の私物が姿を消していく
和「ゲーム機とソフト……DVDにＣＤ…あと、本…これは１つの段ボールに纏められるな…」
うんしょ……と段ボールを梱包する和
智「全部…持って行かなくても…いいんじゃない？そんなに収納できるの？」
和「アメリカの収納って凄いんだから…俺の持ち物なんて全部収納できちゃうよ♪１人部屋だし…何か、こういうの初めてでワクワクしちゃう♪」
ﾌﾝﾌﾝ♪鼻歌混じりで荷造りを進める和は
本当に可愛い…
智「ねぇ…和？」
和「ん？」
智「…翔がさ……会いたがってる……」
和「………そう……」
智「…和もさ……どんな顔していいのかわからないかも知れないけど……アメリカに行く前に、１度翔の面会…行ってきてね…」
和「……あ…写真…写真♪…ﾌﾌｯ♪これは絶対持って行かないと…ホームシックになっちゃうよ♪」
ベリベリと段ボールにガムテープで蓋をする和
智「…じゃあ、仕事行って来るから……和…絶対、面会行ってね」
ちょっと強めに釘をさして
俺は仕事に向かった
和の気持ちもわかるよ…
あれだけ『好きだ』と告げてきた相手が
その気持ちだけを忘れてしまって…
和の中で…答えが決まっていたかはわからない
でもさ、翔がもし和への思いを忘れてなかったら……
この留学話だって…カウンセラーになりたいって夢だって…話がこじれていたかもしれない
和の思い…
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作者名：arashiwistomo | 作成日時：2019年5月13日 12時
