俺の家族は… (ページ4)

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予防接種に行こうページ4

昔は、ケンカじゃ負けなしの最強の不良だった。

たぶん、その力は今も健在だ。

だけど、そんな彼女にも弱点がある。

「もー、なんで学校から強制されるの？！」

子供達が寝たあと、リビングで医療関係の本を読んでいる俺に、Aが一方的にボヤく。

「ちょうどいいじゃん。子供達と一緒にしたら、手間だって少ないでしょ？
それに、学校から強制されていなくたって、喘息持ってる人はやっておかないと。」

そう、彼女の弱点は病院だ。

なんでも、小さい頃に怖い先生からムリヤリ治療をされたらしい。

注射よりも殴られた方が数段痛いし怖いはずなのに、Aはいつも病院に行こうとするたびに、痛いだの怖いだのと言って拒否する。

まあ、そんなところも可愛いと思ってしまう自分がいるのだけど。

「だいたい、学校全体で予防を、なんて言うけど、アイツら絶対やってないから！」

アイツら、というのはAが担任するクラスの生徒達だ。

学年でヤンチャな子を集めたクラスらしく、いつもアイツらとか言っている。

もちろん、その「アイツら」の言葉には愛情がある。

「クラスの生徒がやっていなくても、Aがやってたら安心でしょ。」

「そうだ！シゲが予防接種しましたよって紙を書いてよ！」

良い考えだという雰囲気を出しながら何を言うんだ。

俺はまだ医師免許を失いたくない。

「俺、無職になるよ。」

「大丈夫。教師だったら一馬力で生活できる。」

ドヤんな。

「とにかく、予防接種は慶たちを連れて行くときに一緒にやること。」

「シゲ、それは無理な話だよ。
私の手、2本しかない。暴れるタカと祐を連れて行くなら、手が2本足りない。」

なるほど、そこは盲点だった。

誰に似たのか、というか99.99％くらいはAなんだけど、タカも祐も元気が有り余っている。

「俺が休みの日に行くか。」

「待って、それだと先生誰になんの？」

Aが焦る。

「櫻井先生かな。Aの主治医だし。」

「嫌！この前の検診サボったもん！
絶対怒られた上で検診される！」

櫻井先生、決定。

後で予約をお願いしておこう。

それにしても、いい歳して検診サボるなよ。