五躍 困らせられる事は慣れてない ページ5
「…理想、ね」
佐々木異三郎は誰もいない生徒会室に一人立っていた。
先程、父が決めた婚約者・今井信女に言われた言葉をくり返す。
『私は私の人生を自分で決めて生きていきたいから』
(…いつからあんな事を考えていたんだ…?)
『貴方が父親にどんな理想を抱いてるのか知らないけど、どれだけ理想を向けたって……、答えてくれることなんてないもの』
(…私が父に自分の理想を……?)
異三郎は信女の先程の言葉にずっと頭を悩ませていた。
自分自身は信女に言われるまでまったく気づいていなかった。
ーーーー自分のことで自分が気づかず、他人が気づく。ーーーー
異三郎は内心あさっていた。
父が自分に求めたものは今まで全部成し遂げ期待に応えてきたはずだ。だが、逆に自分が父に求めていたものは何だ…?
感謝? 期待? 賞賛?
いや、そんな甘ったれたものじゃない。
……でも仮にそれがもし信女が言う『理想』だとしたら?
「………」
ふと、異三郎は生徒会長机に置いてある写真立てを眺める。
そこには幼き頃の異三郎と腰掛け椅子に座り微笑む母、そしていつも尊敬していた、期待に応えようとした人物・父が威厳のある顔で佇んでいた。その顔を見ると…
「…私はどんな事をしてでも父に応えなければならない。信女さん、貴女には悪いですが…ね」
異三郎は呟きながら、大事そうに家族が写る写真をずっと眺めていた。
****
神威と信女は広い廊下を並んで教室へと戻っていた。
すると、信女はチラッと神威を見上げて、
「…ねぇ神威。次の授業…一緒にサボらない?」
「えっ?」
神威は相当驚いたのだろう。歩いていた足を止め、信女を見下ろす。一方信女は無表情ではあるが語彙は真剣とでも言うように神威を見上げる。
「…珍しいネ、信女がサボり自分から言い出すなんて」
「私だってそう言う時もあるの。それに…」
信女はしっかりと神威の瞳を見つめる。
「誘ったのは他でもない貴方だからよ」
「…っ」
これは信女の本音である。
神威と二人ですごしたい。神威との時間が欲しい。
「…信女、無表情なくせにたまにすっごい爆弾発言するよね」
「…そう?」
「じゃあ何だって言うの?」
「知らない。……でも、私は素直な気持ち言っただけよ」
「…また」
「神威?」
「信女もう黙ってて。これ以上言ったらドーナツ奢んないからね」
「…黙ってる」
「うん、そうそう」
神威は悪戯っぽく笑うと信女の手を引いた。
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白玉(プロフ) - 面白すぎる..さすがプリン!!ww (2017年10月1日 8時) (レス) id: d7b0293ef7 (このIDを非表示/違反報告)
プリンちゃま(別垢)(プロフ) - みかんさん» みかんさん、ありがとうございます!『面白い』と評価して下さってマジで嬉しいです!!これからも応援ヨロシクお願いします★ (2017年4月8日 20時) (レス) id: 5afe51ca08 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - とっても面白かったです!沖田と神楽の所が特に面白いです!これからも更新頑張ってください!応援しています! (2017年4月8日 19時) (レス) id: 7cb491045b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:交差点プリン | 作成日時:2017年3月31日 18時