第五話 江戸川乱歩 ページ6
「判りました」
どれ位経っただろうか、国木田は彼女に対してそう答えた。
「其の依頼お受けします
我社は貴女の為に尽力を尽くしましょう」
国木田の言葉に千代は目を見開いた。
そして嬉しそうに笑みを浮かべる。
『宜しくお願い致します』
礼儀正しく頭を下げ、彼女はそう云った。
敦と鏡花はその様子を黙って見つめている。
「たっだいま〜」
社のドアの方から江戸川の声が聞こえた。
「あ、乱歩さんが帰ってきたみたいです」
「乱歩さん!」
敦が大量の駄菓子が詰まった紙袋を抱えた江戸川を呼ぶ。
「何だい敦君? 僕は今すこぶる機嫌が良くてね!
なにせつまらない内容の事件だったから期待して
なかったのに犯人が異能力ときたんだ。
『自分の思う通りに人を殺/せる能力』 !そんな
の殺/人しかできない使えないチンケな異能じゃあないか!
まぁ、それも僕の能力で全て解決したけど!」
にへらと笑う江戸川に国木田はすかさず「流石 乱歩さんです」と称賛の声を上げた。
江戸川はそんな言葉も大して気にすること無く千代
に向け足を運ぶ。
「君は?依頼人かな?」
『え?あの、はい』
突然現れた江戸川に千代は驚きながらも答える。
江戸川の緑色の瞳が千代を映した。
「へぇ、なんだそう云うことか・・・
兄、兄ねぇ・・・_____太宰には隠した方が
良いかな?
否、でもなぁ・・・_____」
「あの、乱歩さん?」
首を傾げる敦に「コッチの話」と江戸川は諭した。
江戸川の眼光は鋭く、やがて目を彼女から逸らす。
「今回の依頼、僕は関わらないでおくよ
君たちでも解決できるからね」
ふと、彼は一瞬だけ弱々しく笑った。
彼の初めての表情に内心、敦は驚く。
駄菓子の袋を抱え、最後に一言だけ云った。
「君は兄想いの善いやつだね
君たち兄妹は、矢っ張り何処か似てる・・・」
その言葉が、何故か印象強く、その場にいた者たちの脳に残った。
兄を、知っているのですか−−−−?
どうしてもその言葉が口から出ることは無かった。
.
.
.
何度も同じ夢を見ていた。
夢の内容は断片的にしか覚えていない。
しかし、とても残酷で悲しい夢だった。
朝が来る度に瞳から溢れる涙を拭い、視力を失った左目が最後に映した景色を思い出そうとする。
私は___確かあの時も泣いていた筈だ。
.
.
.
あの時、って−−−−?
私はまた大事だった筈の夢の内容を忘れてしまった。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ジュリさん» コメントありがとうございます。なかなか浮上できませんがこれからもよろしくお願いします。 (2017年11月5日 16時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - 作者さんのペースでいいですから、更新がんばってください! (2017年11月5日 12時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RAIN@元アラジンlove | 作成日時:2017年9月23日 20時