第三話 兄 ページ4
「探し人・・・？」
国木田は怪訝そうに訊き返す。
『私は兄を探しているんです』
「兄？」
『えぇ、』
女性は少し眉を下げて云った。
『私は−−− 千代と申しまして、三門市にてボー
ダー隊員をしております』
「ボーダー・・・」
何度か訊いた事のある言葉に国木田は少し考える素振りを見せる。
『もともと私は三門ではなく、此処から遠い関西
にいました
物心がついた時には家族は兄１人しかいなく、私
は兄と各地を転々としておりました』
『しかし、』
千代は悲しげな表情を浮かべ苦しげに云う。
『子供２人だけで暮らしていける筈もなく、私は路
地裏で死に掛けていた所を孤児院の職員に拾われ
兄と離れ離れに・・・＿＿＿＿』
「孤児院＿＿＿＿」
敦の表情が曇る。
きっとあの場所を思い出しているのだろう。
『私達は生きる為に色々な事をしてきました
生きる為には食料が必要、買うお金は無い、だと
したら奪うしかない
生きる為には人から何もかも奪うしか無かった、命
さえも・・・・・』
懐かしむように彼女は云う。
敦は鶴見川で太宰と出会う直前の事を思い出していた。
『私はまだ善かった
少ない乍らも食べ物にはあり付け、暖かい寝床も
有りましたから・・・』
『でも』千代はどこか遠い目をして云う。
『残された兄は生きる為に自分の手を染め続けた
そうです、』
「『そうです』・・・＿＿＿＿？」
千代の言葉に疑問を持ったのか国木田は聞き返した。
『５年位前でしょうか
孤児院を出てから再び転々としていた処、兄と再会
したんです』
それは偶然だった。
たまたまヨコハマに行き着いた処、人が溢れる街の中で成長した兄と再会したのだ。
互いに時間が無かった為、電話番号と住所しか知る事が出来なかったがそれで充分だった。
『兄と再会してから、私は兄と手紙のやり取りをし
続けました
今の職業から趣味、離れ離れに為った後の生活につ
いて、
各地を転々とする私にとって兄からの手紙が唯一の
楽しみで、届くのをまだかまだかと待ち続けていま
した。
そんな或る日、』
『兄からの手紙がぱたりと途絶えたんです』
内容は暫く忙しくなるから手紙のやり取りは無理だという内容だった。
千代は兄の身を心配する内容の手紙を何通も送った。
しかし、返事は無かった。
『何か兄の身に起きたのだと、私は思いました』
いても立っても居られず千代はヨコハマに向かう決意をした。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ジュリさん» コメントありがとうございます。なかなか浮上できませんがこれからもよろしくお願いします。 (2017年11月5日 16時) (
レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - 作者さんのペースでいいですから、更新がんばってください！ (2017年11月5日 12時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RAIN@元アラジンlove | 作成日時：2017年9月23日 20時
