【ワールドトリガー】探偵社の銀髪さん。【文豪ストレイドッグス】

第四十六話 人質 ページ47

ランク戦ブースを離れ、淳は男たちと賢治の後を追った。

イヤホン型の通信機から聞こえる音を頼りにボーダー内を駆けて行く。


先刻から危険を知らせる放送がボーダー中に流れ、隊員たちを困惑させていた。


「銃を持った男たちが逃走だってさ」

「此処も危ねーだろ」


横を通り過ぎた少年たちはそう話していた。

彼らはトリガーを起動していないようだ。


トリガーを起動していなければ当然彼らは力を持たない子供だ。

銃を持った男たちに出くわせば当然命の危険に晒される。


じんわりと撃たれた肩が熱を持つ。

痛みで麻痺し、右腕の感覚は殆ど無かった。


走る度にずきずきと痛む肩を見て顔を顰め乍ら、尚淳は走り続けた。


『賢治さん・・・！』


先程から声を掛けているが「待ってください！」や「危ないです！」と云う声しか返ってこない。


少し離れた場所から二発の銃声が聴こえ、誰かの悲鳴も聞こえた。


其の方向にひたすら向かう。


「痛っ痛たたたたた！」


通信機から賢治の声が聞こえた。

銃声も聴こえた事から彼が弾丸の餌食になっている事は容易に判る。


長い通路を走り、ボーダー隊員でひしめく部屋の中へ足を踏み入れた。

其の場所だけ他とは空気が違う。


「駄目です！」


賢治の大きな声が通信機無しで聞こえた。

彼の着ている服のそこかしこが破れている。


然し其のような事は淳にとって如何でも善かった。

目の前の光景に目を見開く。


「あ ぁう・・・」


こめかみに銃を突き付けられている女の子。

彼女の淡いピンク色の瞳からボロボロと涙が零れていた。


彼女は見た処、私服姿だ。

きっと帰る為にトリガーを解除した処を狙われたのだろう。

彼女の足元にはトリガーが転がっていた。


傍にいる同い歳位の猫目の少女が「チカ子！」と叫んでいる。

"チカ"其れが彼女の名なのだろう。


「い 出穂ちゃ・・・・・」


涙目で助けを訴える少女。

無意識に唇を噛み締めた。


"記憶を操作する"異能者の男は銃を突き付けているのに表情一つ変わらない。

代わりにあの長い黒髪の男は化け物を見るような目で怯えていた。


「千佳・・・！千佳・・・・・！！」


先程の淳と同じようにボーダー隊員を掻き分けるようにして駆けてくる少年。

翡翠色の綺麗な切れ長の瞳、眼鏡を掛けた其の少年は顔を真っ青にしていた。


「修くん・・・！助けて・・・・・！」


其の姿が昔の自分と重なって見えた。


早く助けなければ、彼女は＿＿＿＿。

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