第十七話 彼女の苦しみ ページ18
「おう!何か或ったら俺たちに何か云えよ!」
格子状の瞳が細められ、彼はニヤリと笑う。
「石川さん
またウチの隊室に寄ってくださいね」
出水は人懐っこい笑みを浮かべた。
嗚呼、純粋な笑みだ。
胸がチクリと傷んだが顔には出さずに淳は笑みを浮かべる。
彼の飴色の髪を撫で、『えぇ また』と云った。
純粋だ、穢れを知らない純粋な子供だ。
こんなにも胸が張り裂けそうに痛いのに、辛いのに、私は隠すように笑みを浮かべる。
とうに純粋な心を捨てて
私は彼等に嘘をついた。
確かに私は育ての親である父を愛し、尊敬している。
否、____"していた"。
凡ては過去形。
彼の凡てを知ったあの日、私は彼を心底怨み、忌み嫌った。
あんな場所に___彼の云い成り人形のままいてはいけないと、私はそう決心して逃げ出した。
自分を偽りたくなくて、素の自分をさらけ出したくて、でも一度張り付いた偽りの仮面は剥がれない。
何時もにこりと向日葵のような笑みを浮かべ、丁寧な口調で人の心を許す。
此の笑みも口調も何時の間にか確りと定着してしまった。
皆の中で私は"善い人"だと云うなら私は其れを演じましょう。
演じ、演じ、演じ続け、壊れるまで皆の"理想の人物像"を。
壊れたら、きっと私は棄てられる。折角見つけた居場所を失くして終う。
自分を欺け、人を欺け、心の痛みも泣きそうな感情も____。
唯一の理解者で或る友人はもういない。何処にも存在しないのだ。
何故私たちを置いて逝ったのですか?
そんな問いは空虚に消える。
虚しい、寂しい、悲しい。
誰も、誰も、私たちの孤独は埋めてくれない。
彼の人は私たちに大きな孤独を与えてしまった。
貴方だってそう思っているでしょう____?
飴色の髪を持つ少年の頭を優しく撫でながら私は小さく呟いた。
『ねぇ 太宰君』
彼女の小さな呟きは誰にも聞かれる事無く静かに消えて行った。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ミリアさん» コメントありがとうございます。ワートリと文ストのクロスオーバーの話なら考えているのですが銀魂の方は大まかなストーリしか知っていないのでご期待に添えるかは分かりません。なかなか占ツクに顔を出す事が出来ませんがこれからも宜しくお願いします。 (2017年9月23日 18時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く気に入った作品で大好きですもし今後他の作品を作る予定があったらワールドトリガーとコラボかトリップか転生した黒バスかアニメKか銀魂の銀時か高杉の姉か妹の作品が読んでみたいです説明が下手ならすみませんこれからも体調にきよつけてがんばてください。 (2017年9月23日 16時) (レス) id: 14f5017be6 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ひかるさん» コメントありがとうございます。なかなか占ツクに浮上する事ができませんが更新頑張りたいと思います。 (2017年6月17日 22時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる - ウォォォ!続きが気になります。(>_<)更新頑張って下さい! (2017年6月17日 14時) (レス) id: c10de46325 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ふにゃたさん» コメントありがとうございます。更新頑張りたいと思います。 (2017年4月3日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨雫 | 作成日時:2017年2月24日 23時