助け給え ページ3
バカの1つ覚えのように歌ってみた動画を
あげ続けていたある日、会社のスタッフから
電話がかかってきた。
「セイレーンさん、そろそろ雑談配信
やりませんか？」
「えっ！？雑談、ですか…？」
「はい。ファンも増えてきましたし
セイレーンさんの魅力を更に伝えるチャンス
ですよ！」
「でも…自分は先輩達みたいに面白い事
言えないですし…。」
「ファンが望んでるんですよ？」
「うぐぅ。」
「大丈夫ですって！セイレーンさん面白いん
ですから自信もってください！ほら、
僕達もサポートしますんで！！」
「…。」
「困った時は生歌で乗り切れば大丈夫です！」
「…分かりました。」
プツリ。
無情に切られる電話。
押し切られてしまったセイレーンは
長い溜息をはいた。
…雑談…お話…生配信…お話……
「はあ。」
不安でしかない。
「…あっ！生配信の仕方教えて貰わなきゃ。」
初配信、失敗はしたくない。
応援してくださるファンの方々の為にも
絶対にやらかしたくはないのだ。
「…会社行くか。」
早速、サポートしてもらいましょう。
そうしましょう。
通話を切ったばかりなのにセイレーンは
後先考えずにかけ直した。
「もしもし？どうかされました？？」
「あの生配信するにあたって色々と
教えてもらいたいんですが…」
「真面目ですねぇ。」
「今から行っても良いですか？」
「今から！？」
「今から。」
「ここに！？？」
「会社に。」
「急すぎません！？」
「はい。」
「駄目ですよ！何時だと思ってんですか！」
「…やっぱりご迷惑でしたよね。すみません。」
「罪悪感が良心にダイレクトアタック！
分かりましたよ！！今日はもう遅いので
明日でいいですか！？」
「は、はいっ！有難う御座います！！」
「イケボだからって何もかも許されると
思うなよ！」
プツリ。
捨て台詞？を残して乱暴に電話を切られた。
「無理言っちゃったけど優しい人だなぁ。」
良い人と巡り会えて良かった。
自分の運の良さを改めて実感しながら
お風呂の準備をするのだった。
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作者名：名無し36494号 | 作成日時：2020年5月24日 19時
