40話 ページ41
その一言で、世界が色づいた気がした。
ぼたぼたと涙が溢れた。
もう、総悟は届かない場所へ行ってしまったと思っていたけれど。
私は、少しでもそこに近づけたのだろうか。
「私、まだ一番隊副隊長でいていい?」
「ああ。」
総悟は、背中から退いた私を見計らったかのように体を起こした。
私は何故だか堪らなくて、その体へ抱きついた。
昔から変わらない、総悟の匂い。
「ねぇ、私総悟のことが、好き。」
「知ってらァ。」
そう、私はあの時。
ミツバ姉のお墓まで私を探しにきた総悟に、告白、とやらの返事を迫られた時。
______
「どうなんでィ、Aは。」
そう顔を近づけてくる総悟に、恥ずかしくて目線を逸らした。
「私も、総悟が、好き、なんだと思う。」
と、答えたのだ。
・
「お前、真選組を続けるんだろ。」
「はい。」
翌日の早朝。
副長室に呼ばれた私は、土方さんの問いにはっきりと答えた。
昨日は泣き腫らしてしまった。
目は赤いし、晴れているものだから誰にも会いたくなかったのだけれど仕方ない。
「頑張れよ、これからも。
__それと、」
「はい?」
「道場でそういうことするのはやめとけよ。
俺だってこんな野暮なことは言いたくねェが、屯所内では大騒ぎなんだよ、見たってやつがいてな。」
首の裏に手を当てながら、タバコをふかし、額に皺を寄せる土方さんに、顔が赤面していくのがわかった。
昨日私は、総悟とひと試合交えた。
けれどそのあと、好きだと言ってしまったり、総悟に抱きしめられたりしていたわけで。
「あのっ、それは、違うんですよ...」
必死に弁明の言葉を探す私の気持ちなどよそに、大きな音が私の耳を劈き、熱風が頰に叩きつけるように当たった。
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時