26話 ページ27
「なぁ、俺はお前に一つだけ謝んなきゃなんねぇ事がある。」
ん?とAは首を傾げた。
「俺は、救えなかった。
松陽を、
お前のお父さんを、救えな___」
「知ってるよ。」
Aの顔を見ることができなかった。
知ってるよ、そう淡々と告げたそいつの顔を。
けれど、ここで下を向けば、俺はまた後悔するのだ。
攘夷戦争に行く前のあの日、Aの顔を見れなかったように。
後ろを振り向いて、Aの顔を見れなかったように。
そんな事で、その先後悔する事も、大切な人を失うことも。
もう、やめにしよう。
...顔を上げれば、ふわりと笑うAがいた。
「知ってたよ。
お父さんがもういないことも、お父さんを斬ったのが銀時だってことも。
__それを、銀時がずっと悩んでいたことも。
お父さんを斬った自身の選択が合っていたのか、間違っていたのか。
それがわからなくて苦しんでたことも。」
Aは、ゆっくり、ゆっくりと俺に近く。
Aが一歩一歩足を踏み出すその時間が酷く長く感じた。
Aは、松陽を救えなかった俺を責めなかった。
それどころか、
「お前___」
「大丈夫。
銀時の選択は間違ってない。
だって、銀時はそれが正しいと思ったんでしょ。
お父さんはもういないから、私が言ってあげる。
自分を責めないで、いいんだよ。」
優しく、Aは俺を抱きしめた。
細い腕、病的なほど白い肌。
幽霊だというそいつの体は冷たく、Aが死んでしまったという事実を体で実感する。
けれど、体が、心が、Aが。
すごく暖かく感じるのは、何故だろうか。
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凛 - とても良かったです! (2022年12月20日 19時) (レス) @page36 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - 岩長漆@三色団子と朧大事さん» ありがとうございます!そういったコメントが一番の励みになります!今後も皆さんにお話を届けられるよう頑張ります! (2018年6月11日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
岩長漆@三色団子と朧大事(プロフ) - 突然失礼いたします、岩長と申します!けんそう様の作品読ませて頂き、とても感動しました!次作の方も頑張ってください!応援しております! (2018年6月10日 22時) (レス) id: c1dc633bc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年2月10日 20時