♛︎episode140＿＿沈痛 ページ50
✘
世界が急速に遠のいていき、不意に目が覚めた。
眠りのために上がってた体温が急激に下がっていくのを感じる。布団の感触や外気の匂いが五感に、さっきまでのは噓だ、これが
薄く目を開くと世界は元通りで、私は 布団の中で寝返りをして安心した。そして枕元に置いていた端末をつついて、時刻を確認する。
「まだ三時……ねむ」
あと二時間は寝れる。
もう一度寝返りをうち、眠っていたときと同じ格好になると、枕に染みついていた夢の香りを嗅いだかのように、さっきまで見てた夢の記憶がよみがえった。
──『私が玲王の、トモダチ第一号になってあげる！』
それは幼い日の記憶。
小さい玲王に向かって私は手を差し伸べていた。その手を取った玲王が嬉しそうに はにかんで、私を抱きしめて、そこで目が覚めたんだ。
夢の中での出来事なのに、やけに生々しくて、抱きしめられてたような感触が今でも残ってる。いや、それよりも気にすべきは夢の中での玲王の行動だ。私の記憶が正しければ、玲王は私の手を取っただけで抱きしめてはいないはず。じゃあ、何故。
こんな話を聞いたことがある。人は無意識に求めているものが夢の中で具現化して表れることがある、と。
「(いやいやいや、ありえないでしょ)」
辿り着いた結論に眉を顰めて、頭を振った。
もしそうだとしたら、それはアレだ、私が玲王に抱きしめられたいとか思ってることになる。
そんなこと断じてない。てか夢の中じゃなくても玲王は普段から抱きしめようとしてくるから回避するのに苦労してる。じゃあ、それでも見てしまうのは？
「(いやいやいやいや……ないないないない)」
また頭を振った。ボサボサの髪が枕の上でさらに乱れて、横髪が私の視界を隠すように垂れてくる。
「(でも、あのあとどうなったんだっけ)」
瞼を閉じて脳の奥底にある
「玲王……」
意味もなく名前を呟いた。
昨夜の食堂で、最後に見た玲王の顔が ずっと頭から離れなかった。青ざめていて力なさそうで、悲しそうで恨めしそうで憎らしそうで、何とも言いようがない表情をしていたから。あそこまで傷ついた玲王の顔は、初めて見た気がする。
だから少なからず動揺した。
──胸が、痛んだ。
(あぁ、もう、クソ。……全部、全部玲王のせいだ)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 604人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はもに(プロフ) - かっぱさん» かっぱさん、はじめまして！励みのコメントありがとうございます。一番なんてお言葉頂けて感無量です、、❕これからもご期待に添えられますよう頑張りますᵕ̈* (2023年2月20日 0時) (
レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
かっぱ - このお話本当に大好きで、一番気にいってます♡これからも応援してますね!! (2023年2月19日 21時) (レス) @page49 id: 3275caf583 (このIDを非表示/違反報告)
はもに(プロフ) - 七子さん» 七子ちゃん、感想投げてくれてありがとう❕ ちょっとドギマギの三角関係ではあるけれど、話の落とし所はちゃんと決めてるので見守ってもらえると嬉しいᵕ̈* いつも応援してくれて励みもらってます！これからもよろしくね❣️ (2023年2月17日 0時) (レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
七子(プロフ) - 潔が好き⁈⁈⁈そんなの…そんなのあんまりよ‼︎二次創作でレオと存分にイチャつかせてやるんだから（現実逃避） (2023年2月15日 21時) (レス) @page35 id: 749c6d74de (このIDを非表示/違反報告)
はもに(プロフ) - 凛香奈さん» 凛香奈さん、初めまして！繰り返し読んでいただけてるという事実に感極まってしまいました🥲ここ最近更新の時間帯が不定期ですが、引き続き頑張っていきたいと思います！応援ありがとうございます🙇♂️とても励みになりました！ (2023年2月13日 0時) (レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はもに | 作成日時：2023年2月7日 18時
