episode97＿＿兆し ページ1
✘
『ここが一番、ゴールの匂いがする！！』
二子がゴール前で繰り出したパスは、世一が大川の前に躍り出たことによって阻止された。いつの間にか手の震えは治まっていて、今はただ食い入るように画面を見つめて、勝敗の行く末を見守っていた。
世一から國神への超ロングパス。総攻撃を仕掛けていたチームYの守備は手薄になっていて、彼らはファウル覚悟で國神を止めに行く。
これ以上の突破は愚策と踏んだ國神は蜂楽へボールを繋ぐ。蜂楽の得意武器であるドリブルで一気に攻め入り、あっという間にゴール前まで躍り出た。
「あぁっ！惜しい！」
「よく見ろ。あれは囮だ」
蜂楽からのロングパスを受けた我牙丸が、頭からの全身ダイブで突っ込んだけどボールはすり抜けてしまった。私が頭を抱えてる隣で絵心が冷静に諭すから、目を凝らしてよーく画面を見る。
──ボールの、先。その先にいたのは。
「世一!? なんで、いつの間にあんな」
「凄い……あの子あんなに体力ある子でしたっけ？」
「いや、違います。そんなことよりもなんで……」
さっきまで自陣のゴール前にいたはずなのに、いつの間にかチームYのペナルティエリアまで上がってた。しかも誰も世一の存在にボールが届く瞬間まで気づかなかった。映像越しに見ていた私でさえ。だけど蜂楽だけが世一の存在に気づいてたんだ。
「行け……」
その時、その瞬間、その場にいた誰もが息を呑んだ。時間が止まったような感覚さえした。蜂楽からのパスを世一はトラップすることなくゴールへと叩き込んだ。國神にも負けず劣らないその威力と完璧なシュートコースに私は目を奪われた。
「アンリちゃん」
「……あ、はい」
「放送よろしく」
私の隣で帝襟さんも暫く呆然としていた。絵心に声をかけられてようやく我に返った帝襟さんがマイクをONにして放送を繋いだ。
「TIME UP!!
チームYの選手達が、膝から崩れ落ちる。二試合とも負けてしまったから、勝ち上がれるのは得点王のみになったからだ。嘆くその姿が痛々しくて見てられなくて、顔を背けようとした。
「世一？」
賛美する仲間を振り切って、世一は二子の前まで歩いて、立ち止まった。シュートじゃなくパスをして、負けて悔しがって泣いてたあの頃の世一はもういない。
映像の中、跪く二子を見下ろしていた世一の姿は──立派な
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 604人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はもに(プロフ) - かっぱさん» かっぱさん、はじめまして！励みのコメントありがとうございます。一番なんてお言葉頂けて感無量です、、❕これからもご期待に添えられますよう頑張りますᵕ̈* (2023年2月20日 0時) (
レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
かっぱ - このお話本当に大好きで、一番気にいってます♡これからも応援してますね!! (2023年2月19日 21時) (レス) @page49 id: 3275caf583 (このIDを非表示/違反報告)
はもに(プロフ) - 七子さん» 七子ちゃん、感想投げてくれてありがとう❕ ちょっとドギマギの三角関係ではあるけれど、話の落とし所はちゃんと決めてるので見守ってもらえると嬉しいᵕ̈* いつも応援してくれて励みもらってます！これからもよろしくね❣️ (2023年2月17日 0時) (レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
七子(プロフ) - 潔が好き⁈⁈⁈そんなの…そんなのあんまりよ‼︎二次創作でレオと存分にイチャつかせてやるんだから（現実逃避） (2023年2月15日 21時) (レス) @page35 id: 749c6d74de (このIDを非表示/違反報告)
はもに(プロフ) - 凛香奈さん» 凛香奈さん、初めまして！繰り返し読んでいただけてるという事実に感極まってしまいました🥲ここ最近更新の時間帯が不定期ですが、引き続き頑張っていきたいと思います！応援ありがとうございます🙇♂️とても励みになりました！ (2023年2月13日 0時) (レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はもに | 作成日時：2023年2月7日 18時
